最も「花魁」役が上手かった女優は? 妖艶な演技が光る宝石(3)致死量の色気がヤバい…黄泉へと誘う絶世の美女
大河ドラマ『べらぼう』で“伝説”の花魁に扮する小芝風花の堂々たる演じっぷりが話題を集めている。そこで今回は、映画やドラマにおいて、花魁役が最高だった女優を5人セレクト。美しいものに惹かれてしまう人間の性質は大昔から変わらない。名女優たちの艶やかな芝居の魅力に酔いしれてほしい。第3回。(文・野原まりこ)
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吉岡里帆『にんげんこわい2』(2023)
【作品内容】
落語の演目「品川心中」を基にしたWOWOW制作のオムニバスドラマ。
かつて人気だった遊女・お染(吉岡里帆)は、遊郭の行事に必要なお金を工面できず、恥をかくくらいならと死ぬことを決意する。だが1人で死ぬのは嫌だったので、自分に思いを寄せる貧乏な貸本屋・金蔵(井之脇海)に心中を持ちかける。
2人は品川沖までやってくるが、金蔵が逃げることを提案したため、お染は金蔵を海に突き落とす…。
【注目ポイント】
芸能界の第一線で活躍する吉岡里帆が演じたのは、落ち目の花魁・お染。親しみやすい雰囲気の吉岡里帆のパブリックイメージを裏切る、哀愁たっぷりな演技で観る者を魅了する。
一般的に映画やドラマに登場する花魁は、ゴテゴテとした着物で着飾っている印象が強いが、本作で吉岡演じる落ち目の花魁・お染は、そこはかとなく見窄らしさがある。
しかし、客の前に姿を現すとたちまち色気が溢れ、顔の角度や少しだけのぞいた首元に目が釘付けになる。
一方、媚態に富んではいるものの、隙があるように見えて、実は男を手の平で転がしているのが見て取れる点が面白い。その上、鼻にかけたような猫撫で声で男を誘惑しながら「私と心中してくれない?」とサラリと言う姿は、恐怖すら感じさせる。花魁を演じた吉岡は、エロスとタナトスの使い分けがとにかく見事なのだ。
じわじわと沼に引きずり込むような「にんげんのこわさ」を表現した本作は、吉岡里帆の役者としての引き出しの多さを知る上でうってつけの1本だと言えるだろう。
(文・野原まりこ)
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【了】