最も「花魁」役が上手かった女優は? 妖艶な演技が光る宝石(5)名言連発…強さと儚さが共存する芝居がスゴい
text by 野原まりこ
大河ドラマ『べらぼう』で“伝説”の花魁に扮する小芝風花の堂々たる演じっぷりが話題を集めている。そこで今回は、映画やドラマにおいて、花魁役が最高だった女優を5人セレクト。美しいものに惹かれてしまう人間の性質は大昔から変わらない。名女優たちの艶やかな芝居の魅力に酔いしれてほしい。第5回。(文・野原まりこ)
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土屋アンナ『さくらん』(2007)
監督:蜷川実花
脚本:タナダユキ
原作:安野モヨコ
出演:土屋アンナ、椎名桔平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、小泉今日子、安藤政信、永瀬正敏
【作品内容】
吉原遊郭「玉菊屋」に売られた少女・きよ葉(土屋アンナ)は、遊女になることを拒んで逃亡をはかるが、すぐに捕まってしまう。しかし、人気遊女・粧ひ(菅野美穂)に挑発され、花魁になることを決意する。
そうして人気遊女となったきよ葉だったが、ある日、客の惣次郎(成宮寛貴)に恋をする。
【注目ポイント】
人気漫画家・安野モヨコ原作、脚本・タナダユキ、監督・蜷川実花という豪華スタッフ陣によって制作され、日本映画離れした映像美と、主演を務めた土屋アンナの好演が話題となった本作。
土屋アンナ演じるはきよ葉は、勝ち気な性格で喧嘩っ早いが、一方で、茶目っ気たっぷりのかわいさも際立つ。「てめぇの人生、てめぇで咲かす」という本作のキャッチコピーが示すとおり、彼女が自分の人生を力強く切り開いていくサマが、観る者の胸をスカッとさせる。かと思えば、恋をした時には乙女のようないじらしい表情を見せ、ギャップが胸をくすぐる。
蜷川実花監督の特色である極彩色で彩られた遊郭の世界。演者はド派手な演出に負けないようにしなければいけないが、その点、土屋アンナの個性は蜷川演出と拮抗しており、見応え抜群だ。
剥き出しの感情と凛とした佇まいの美しさは、土屋ならでは。生命力に満ちているのに、消えてしまいそうな危うさを孕んだ芝居は必見だ。
(文・野原まりこ)
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