実話の方が恐ろしい…実在の殺人事件がモデルの映画(5)モヤモヤするラスト…アジア最悪の連続殺人鬼の正体は?
実際の殺人事件を基に制作された洋画は、そのリアルなストーリーと描写で観る者に強烈な印象を残す。今回は、歴史に名を刻んだ事件を元に描かれた5つの傑作映画をセレクト。実際の事件に迫り、本作の魅力とその背後にある事件の背景に迫る。第5回。(文・村松健太郎)
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未解決事件を追った名作
『殺人の追憶』(2003)
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、シム・ソンボ
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ、ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン、パク・ノシク、チョン・ミソン
【作品内容】
1986年、ソウルの近郊の用水路で束縛された状態の若い女性の遺体が見つかる。その後も同じ手口の殺人事件が相次ぎ、地元警察の刑事パク・トゥマンとソウル市警から派遣された若手刑事ソ・テユンが捜査に当たる。性格も操作方法も間反対の2人は衝突しながらも執念で捜査を続ける。
【注目ポイント】
韓国において長らく未解決事件とされてきた“華城(ファソン)連続殺人事件”。1986年から1991年までの間に10人の女性が殺害された。事件が起きた韓国は当時軍事独裁体制末期であり、捜査の在り方にも多くの壁があった。公訴時効を迎えた2019年にすでに別件で逮捕・収監されていた男が犯人であることが判明した。
元々は事件を基にした舞台があり、その戯曲を基にポン・ジュノ監督が映画化した。主演は後に『パラサイト 半地下の家族』(2019)でも主演を務める、韓国を代表する名優ソン・ガンホが務めた。
硬派な内容ながら興行的な成功も収めた本作は、公開から20年以上が経った今でも韓国映画を代表する名作として知られている。
物語は、農村地帯の華城市の用水路から女性の遺体が発見されたところから始まる。主人公のパク刑事(ソン・ガンホ)は、無理やり自白を取るなど強引な捜査を進めるが真相に辿り着けずにいる。そんな中でソウルからソ刑事(キム・サンギョン)が派遣され、パク刑事と一緒に捜査に当たる。
捜査陣は当時のテクノロジーを駆使した捜査(まだ未熟な部分もあった)や指紋捜査、筆跡鑑定などを採り入れ、犯人に迫ろうとする。その結果、事件が必ず雨の日に起きていること、犯行日には必ずラジオに同じ曲がリクエストされていることなどが明らかになっていく。
しかし、最終的に、犯人らしき人物が登場するものの、決定的な証拠はなく、容疑者逮捕の瞬間は描かれない。心が晴れないモヤモヤするラストもまた、本作を何度も見返したくなる名作にする上で重要な役割を果たしていることは言うまでもない。
(文・村松健太郎)
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