今、最も「プロからの評価が高い」日本人俳優といえば?(2)唯一無二の演技力…名だたる名優が憧れる男は?
同業者から尊敬を集める音楽家は「ミュージシャンズ・ミュージシャン」と呼ばれる。俳優界も例外ではなく、「アクターズ・アクター」と呼ぶほかない存在が少なからずいる。現場を知る者たちが「共演したい」と語る俳優には、突出した何かがあるのではないか。今回は“同業者にファンが多い俳優”を5人セレクト。その活動に焦点をあて、演技の素晴らしさを紐解いていく。第2回。(文・shuya)
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孤高の俳優から国民的な名優へ
浅野忠信
浅野忠信は、日本映画界のみならず、国際的にも高い評価を受け続けている稀有な俳優のひとりだ。近年では、世界中の映画祭で話題となった配信ドラマ『SHOGUN 将軍』に出演し、第82回ゴールデン・グローブ賞で助演男優賞を受賞。その存在感と演技力は、日本国内のみならず、海外でも着実に浸透し始めている。
彼の演技は、型に縛られない自由さと、内側からにじみ出るような感情の揺らぎを併せ持つ独特のスタイルが特徴だ。ジャンルや国境を越えて観る者の心を掴み、その感情に深く訴えかける。言葉ではなく、佇まいや沈黙の“間”で語るその表現力は、観客のみならず共演者たちの心にも強く刻まれている。
1990年代にデビューした浅野は、是枝裕和(『幻の光』)、青山真治(『Helpless』)、岩井俊二(『PiCNiC』)といった日本映画の新時代を築いた監督たちの初期作品に出演し、その確かな演技で存在感を示した。90年代に青春を過ごした観客にとって、彼はまさに“時代を象徴する俳優”であり続けている。
そんな浅野に憧れを抱く俳優は数多い。その一人、滝藤賢一は2014年のNHKドラマ『ロング・グッドバイ』で浅野と共演している。滝藤はインタビューの中で、こう語っている。
「僕にとって浅野さんは、もっとも影響を受け、ずっと憧れてきた存在です。
2010年の映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』で共演させていただいたときは、緊張のあまり浮き足立ってしまい、セリフが飛んでしまった苦い思い出があるんです。だから今回はその“リベンジ”のつもりで臨みました(笑)。
当時、浅野さんが連続ドラマに出演されることは珍しかったので、ご一緒できたこと自体が本当に貴重な経験でした」
また、俳優・加瀬亮も浅野の芝居を「嘘がない」と絶賛しており、彼に憧れて付き人からキャリアをスタートさせたことでも知られている。そのほか、村上淳や柳俊太郎といった俳優たちも、浅野を尊敬する存在として名前を挙げている。
かつてはミニシアター系映画の常連として、“わかる人にはわかる”俳優とされていた浅野だが、今やその活躍の場は地上波ドラマからハリウッド作品にまで広がっている。キャリアを重ねる中で、彼の表現は“特別な俳優”という枠を超え、あらゆる層の観客の心を動かす力を持つものへと進化した。
唯一無二の存在感を持つ浅野忠信は、今や広く支持される“表現者”として、国境を越えてその輝きを放ち続けている。
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