史上最も意味深な“ジブリ飯”は? 目から鱗のトリビア(2)不甲斐なく泣いた少女を勇気づけた食べ物は?

text by 市川ノン

登場人物の日常を丁寧かつ繊細に描くことが魅力の一つである「スタジオジブリ」作品。ジブリ作品に触れたことがある人ならば、美味しそうな食事の描写に目が留まった経験をお持ちだろう。今回は歴代のジブリ作品の中から“ジブリ飯”シーンを5つ紹介。料理から伝わる劇中の時代背景や、宮崎駿の日常風景などの制作裏話も紹介する。第2回。(文・市川ノン)

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『耳をすませば』(1995)鍋焼きうどん

© 1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH
© 1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH

【作品内容】

 柊あおいが『りぼん』で連載していた同名原作に、宮崎駿が興味を持ち、映画化に至った。実は今作の監督は宮崎や高畑勲を支えたアニメーター・近藤喜文が務めている。近藤は公開後の1998年に亡くなったため、今作が最初で最後の監督作になった。

 読書好きな中学3年生の少女・月島雫は図書館の多くの貸し出しカードに記載されている「天沢聖司」の名前を気にかける。夏休みのある日、雫は猫に導かれ、「地球屋」という雑貨店を訪れるが、やがて店主・西司朗の孫が天沢聖司であることを知る。2人は徐々に親密になっていくが、聖司はバイオリン職人になるためイタリアへ渡ることに。雫も聖司に刺激を受け、「物語」を書くことを決心するのだった。

【注目ポイント】

 雫は雑貨屋に置かれ、店主・西老人の宝物である猫の男爵の人形「バロン」を主人公に「物語」を書くことの許可を得る。ただ、西老人は「できあがったら、最初に読ませてほしい」という条件をつけた。その後、雫は物語を書き終え、西老人に見せる。西老人は雫の苦労を労ったが、まとまりがなく、納得のいかない出来を雫も自覚しており、自分の不甲斐なさや恥ずかしさで泣いてしまう。そんな雫に西老人が作ったのが、鍋焼きうどんだ。

 卵やかまぼこなどが入った熱々の鍋焼きうどんは、寒いバイオリン製作部屋でひとり読み終えるのを待っていた雫の体を温めると同時に、自分のふがいなさや不安に打ちひしがれる彼女の心をも回復させたに違いない。

 また、西老人は孫・聖司が初めてバイオリンを作り上げた際に山盛りのラーメンを作ってあげたそう。西老人は、若者が自分の人生を切り開いた瞬間に、それを祝うかのように、食事を振る舞うのかもしれない。そんな好々爺の行動に、誰もがハートフルになるだろう。

(文・市川ノン)

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