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名作日本映画ぶち壊しの駄作…史上最悪のリメイク映画(5)まさかのお蔵入り…公開すらされなかった理由は?

text by 編集部

日本映画が海外でリメイクされている作品がいくつか存在するが、今回はその中から史上最低の映画をセレクト。興行的には成功した作品でも、オリジナルファンを憤慨させる駄作や、監督が嫌々で制作したもの、そもそも公開に至らなかった作品など、あらゆる方向からワーストリメイク映画を選出した5本を紹介する。

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“商業的成功の見込みなし”
不遇に見舞われたリメイク映画

『HACHI 約束の犬』(2009)

リチャード・ギア
リチャードギアGetty Images

上映時間:93分
原作:『ハチ公物語』(1987)
製作国:アメリカ
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:スティーヴン・P・リンゼイ
キャスト:リチャード・ギア、ジョアン・アレン、サラ・ローマー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ジェイソン・アレクサンダー、エリック・アバリ、ダベニア・マクファデン、ロビー・コリアー・サブレット

【作品内容】

本作は、その後、名プロデューサーとして映画界に燦然たる名を残した奥山和由を中心に、先鋭的作品を多く手掛けた新藤兼人を監督に、主役には仲代達矢を起用し、さらに、当時は異例だった東急や三井物産といった映画界以外からの資本を取り入れ、製作された『ハチ公物語』のハリウッド版リメイク作品だ。

【注目ポイント】

『ハチ公物語』は、渋谷駅の前で10年にもわたり飼い主を待ち続けた“忠犬ハチ公”を題材に、実話ベースの物語。興行収入約50億円、配給約20億円というメガヒットを記録し、若手の1人だった奥山を一気にヒットメーカーに押し上げた作品でもある。

日系3世で中国系でもあったプロデューサーのヴィッキー・シゲクニ・ウォンが、原作に感銘を受け、愛犬に「ハチコー」と名付けるほどの惚れようだったことが、リメイク版製作の原点にあった。その愛犬が亡くなったのを機に映画製作に取りかかる。

原作では仲代達矢が演じた主人公の上野秀次郎にあたる人物を、リチャード・ギアが演じ、その妻役にジョアン・アレンが配されるなどの豪華キャストを揃えた本作。エンディングも、飼い主である秀次郎が亡くなった後、残された家族から無視される日本のオリジナル版とは打って変わって、リメイク版ではリチャード・ギア演じる大学教授・パーカーの死後も、その家族から寵愛を受けるという感動的なストーリーとなっている。

2009年末の北米公開が予定され、批評家からの前評判も高かったものの、一部映画祭での上映にとどまり、劇場公開はされなかった。配給会社のソニーステージ6フィルムズは、公開中止の理由を明らかにしなかったが、DVD、ブルーレイでの販売は行われ、まずますの売り上げを記録し、鑑賞者からは絶賛の声があふれた。

本作が不運だったのが、ます、配給会社探しに難航し、大手には“商業的成功の見込みなし”とみなされ、小さな配給会社しか手を挙げる社がなかったこと。そのため宣伝面も含め、力が弱く、大作が多く封切られるの年末のタイミングだったことで、敬遠されてしまったという背景もあったようだ。内容が良かっただけに、不幸な運命を辿った、隠れた名作といえそうだ。

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