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「W杯が10倍楽しめる!?」最高のサッカードキュメンタリー映画(1)。熱すぎる“世界最弱決定戦”、その魅力は?

text by 寺島武志
Getty Images

ピッチを駆けまわる選手、プレーを見つめる監督、サポーターなど、複数のドラマが交錯するサッカーは、度々映画の題材になってきた。今回は、サッカーを通じて世界が抱える社会問題への考えが深まる、ドキュメンタリー映画をご紹介。FIFAランキング最下位チームにフォーカスした作品など、個性あふれるラインアップが出そろった。(文・寺島武志)

FIFAランキング最下位の弱小国に密着
勝ち負けを超えたサッカーの魅力に迫る

『アザー・ファイナル』(2002)


出典:amazon

原題:The Other Final
製作国:オランダ・日本
監督:ヨハン・クレイマー

【作品内容】
2002年6月30日、横浜でワールドカップの決勝戦、ブラジルvsドイツが開催された一方で、ヒマラヤ山脈の東にある小国ブータンで“もう一つの決勝戦”が行なわれた。

FIFAランキング203か国中202位のブータンと最下位203位のカリブ海に浮かぶ小さな島・モントセラトによる対戦だ。モントセラトの代表チームははるかブータンまで計5日もかけてやってくる。迎えるブータンでは歓迎のゲートが用意され、国民挙げての盛り上がりを見せる。そんな両国にはワールドカップに負けない情熱が確かに存在した。

サッカーブータン代表の面々2015年Getty Images

国土のほとんどが高山というブータンと、火山国の英国領モントセラトは、両国ともFIFAに加盟したばかりで、満足なプレー環境がないなど、多くのハンディを背負っている点では一致している。本作は、この試合の模様を文化、観客、両国の交流などから多角的に捉えたドキュメンタリー作品だ。

サッカーの楽しさや面白さを形作るものとして、プレーレベルの高さだけではないということを教えてくれる。この対戦に携わる全ての人が楽しそうであり、かつ真剣に取り組んでいる。

試合は4-0でブータンが大勝したが、トロフィーは2つに分割され両チームに与えられる。その両チームのイレブンは、対戦相手の文化を知り、リスペクトし、そして純粋に試合を楽しむ姿はサッカーの本質という点において縮図ともいえる試合といえ、ワールドカップの決勝戦と比べても遜色なく、“世界最弱決定戦”を超えたエモーショナルな作品となっている。

普段は絶対に焦点の当たらないところにスポットライトを当てた同作は、サッカー好きにとっては、その面白さを深めることだろう。

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