日本人が激怒…!? 間違いだらけの日本描写が酷いアメリカ映画(5)137億円を台無しにした最低のラストは?
サムライやニンジャ、ゲイシャ、ヘンタイなど、欧米に浸透している日本のイメージは様々だ。そんな日本のエッセンスを取り入れたハリウッド映画の中には、日本人から見ると違和感満載のおかしな仕上がりになっている作品もちらほら。今回は、そんな勘違いの日本描写が甚だしいハリウッド映画を5本ご紹介する。
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武士道の美学が西洋的なハッピーエンドで台無しに
『ラスト サムライ』(2003)
上映時間:154分
原題:The Last Samurai
製作国:アメリカ
監督:エドワード・ズウィック
脚本:ジョン・ローガン、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコビッツ
原案:ジョン・ローガン
キャスト:トム・クルーズ、渡辺謙、ティモシー・スポール、ビリー・コノリー、トニー・ゴールド、真田広之、原田眞人、小雪、ウィリアム・アザートン、菅田俊、小山田真、スコット・ウィルソン、伊川東吾、中村七之助、池松壮亮、福本清三、松崎悠希、羽田昌義
【作品内容】
本作の舞台は、明治維新直後の日本。政府は急速な西洋化を求め、海外の文化を取り入れようとしていた。
しかし、旧武士たちは立場の存続が危ぶまれ、また、古き良き日本の伝統をも破壊されるような気配を感じ、新政府の動きに抵抗を見せる。
その混乱の中、主人公の米国の軍人、ネイサン・オールグレン(トム・クルーズ)が軍隊育成のために来日し、政府の指示で軍隊を育てる。
育成途中の軍を率いて武士の一掃を命じられるも失敗。オールグレンは捕虜の身になる。
しかし、そこから村人達との触れ合いを通じ、日本における文化、また武士道を目の当たりにし、次第に考え方が変わり、自ら侍達の味方につき、新政府との最後の戦いに挑む物語だ。
【注目ポイント】
日米ともに大ヒットし、米国の興行収入は4億5600万ドル、日本国内でも約137億円を記録。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞においても、様々な分野でノミネートされた。
そして、武士を束ねるリーダー・勝元盛次役の渡辺謙は、これがハリウッドデビュー作で、その好演によって“世界のケン・ワタナベ”となった作品でもある。
従来のハリウッド発の日本を舞台とした作品には見られなかった、日本文化へのリスペストを感じさせる作品であり、それは莫大な製作費や優秀なスタッフ、日本人キャストの大量起用にも表れている。
作中、突如として忍者が登場する。時代考証から外れていると日本人スタッフが難色を示したものの、監督やアメリカ人スタッフの「間違っているのは分かっているが、どうしても忍者を撮りたい」という要望が通ってしまい、オリエンタルなシーンが唐突に挿入されるに至った。
また結髪を中国人スタッフが担当したため、侍の髷は中国の出稼ぎ労働者風だ。
さらに、ラストシーンでは武士道を最期まで貫き通し、自害する勝元と、土下座でその最期を見届ける政府軍に対して、トム・クルーズ扮するオールグレンは自害することなく、明治天皇に謁見し、大和魂の宿った国家作りを説く。
しかしながら、もし仮に潔い死を尊ぶ武士道精神を守るならば、ラストシーンは勝元らと運命を共にし、自害する、という流れが相応しかったのではないかという疑問がある。時代に忘れ去られ滅びゆくことを美学とするならば、戦後に自軍の名誉回復を訴えるなどは恥ずべき行為なのではないか。
本作の結末は、オールグレンが武士と過ごした山村に帰り、幸せに暮らすというものだ。死を以って自らの意志を貫いた侍の滅亡と対照的な温いラストである。
武士道精神の尊さを表現するならば、敗北と滅亡の悲劇にしっかりとフォーカスを当てるべきであり、西洋的なハッピーエンドを盛り込むことで、作品から読みとれるメッセージが曖昧なものとなってしまったといえよう。
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