未曽有の大震災を描いた日本映画の最高傑作は? 衝撃作5選。胸が詰まる緊張感…号泣必至、心震える邦画をセレクト
地震大国・日本。阪神・淡路大震災、東日本大震災などを題材にした映画は数多い。近年は南海トラフ地震の発生も囁かれており、気をぬけない状況が続いている。震災は人々の心に大きな傷を残したが、その教訓を活かした作品が生まれたのも事実だ。そこで今回は、震災を扱った映画を5本セレクトしてご紹介する。(文・阿部早苗)
———————————
ニュースでは映し出されなかった真実を描く
『遺体 明日への十日間』(2013)
監督:君塚良一
脚本:君塚良一
原作:石井光太『遺体 震災、津波の果てに』
出演:西田敏行、緒形直人、勝地涼、國村隼、酒井若菜、佐藤浩市、佐野史郎、沢村一樹、志田未来、筒井道隆、柳葉敏郎
【作品内容】
震災直後の釜石市では体育館が遺体安置所となった。遺体の多さに市職員は言葉を失い、医師たちも作業に追われていた。そんな中、民生委員の相葉は無残に扱われる遺体に心を痛め、ボランティアを名乗り出る。
【注目ポイント】
東日本大震災から10日間、岩手県釜石市の遺体安置所を取材したジャーナリスト・石井光太氏のルポタージュをもとに、『踊る大捜査線』シリーズで脚本を手掛けてきた君塚良一がメガホンを取った。主演は故郷が東北でもある西田敏行をはじめ、佐藤浩市、柳葉敏郎、緒形直人、勝地涼、國村隼など豪華キャストが名を連ねた作品だ。
津波によって壊滅的な被害を受けた釜石市では体育館が臨時の遺体安置所となった。地震の影響で電気や水道といったライフラインは止まり、余震も続くなかで次々と毛布にくるまれた泥だらけの遺体が体育館に運ばれてくる。医師たちも検死などの作業に追われ、遺体には番号がふられていった。
この状況を目の当たりにした民生委員の相葉(西田敏行)は遺体の多さと、無残に扱われている亡骸にショックを受ける。元葬儀社で勤務をしていた相葉は、その経験を活かし遺体安置所の世話役を嘆願する。
警察、消防、市の職員らは遺体の多さに戸惑う中で、相葉の存在は大きかったはずだ。自身も被災者でありながら動揺する職員をサポートしつつ、遺体一人一人に声をかけ、死後硬直した体をマッサージするなど震災で命を落とした人々を敬う姿勢を崩さなかった。
そんな相葉の姿によって市職員たちも積極的に遺体と向き合うが、現実は残酷で犠牲になった知り合いとの対面や幼い子供の遺体に心を震わす。
一方で、犠牲になった家族との対面シーンも描かれている。目の前で娘が津波に飲み込まれた母親、そして両親の遺体を探す男子学生、その姿は東日本大震災後に起きていた紛れもない事実なのだ。
誰しもが未曾有の災害に戸惑ったあの日。報道によって被災地の様子を知った人も多いだろう。しかし、報道だけでは伝えきれなかった被災地の様子を映し出している本作。震災を風化させないためにも、多くの人に観ていただきたい作品だ。