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『相棒』史上最悪の鬱回は? 衝撃のトラウマエピソード(2)あまりにも暗すぎる…無念の死を描いた名作は?

text by Naoki

25年以上400作品以上が放送されているドラマ『相棒』。現代社会を切り取るという方針と視聴者の顰蹙(ひんしゅく)を恐れないという攻めた姿勢で、これまで数々の名エピソードを生み出してきた。今回はその中でも特に視聴者をノックダウンさせた鬱回を5つ紹介したい。(文・Naoki)

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”社会の無情さ”を描く

シーズン9「ボーダーライン」(第8話)

及川光博【Getty Images】
及川光博Getty Images

放送日:2010年12月15日
脚本:櫻井武晴
犯人役:柴田(山本浩司)

【注目ポイント】
 こちらを選出したのは”社会の無情さ”を鮮明に描いているからである。

 手に傷を負った男がビルの屋上から転落死したことをきっかけに、殺人事件として捜査が始まる。 被害者は住所不定無職の柴田。特命係は彼の足取りを追う。

 柴田は正社員になれるはずだった会社を突然解雇され、婚約者や家族からも見放される。さらには、住む家も新たな仕事も無くし、ネットカフェで努力の末に資格を取得するが”経験者”募集で役に立たず、若いからと生活保護の申請もさせて貰えず、お金欲しさに”名義貸し”に手を染めるようになる。

 しかし、そのわずかな収入もやがて途絶え、ネットカフェの代金も払えなくなった柴田はレンタル倉庫で暮らし始めるが、そこも追い出される。かつて住んでいたアパートにも新たな居住者が決まり、履歴書に使える住所すら失ってしまう。

 全てに絶望した柴田は手に傷を付けてから自殺するのであった。柴田が、自身の死をもって世間に訴えたかったのは「私は社会に殺された」というメッセージである。

 本作は2011年当時、”貧困ジャーナリズム大賞”を受賞した。

 柴田が死を選んだ理由を淡々と追っていくだけのエピソードだが、派遣切りや偽装請負や名義貸しなど日本の闇が一般人視点で明らかにされていく展開は、ただただ暗い。

 特に柴田の最期は演じる山本浩司の熱演もあり、痛々しくて思わず目を伏せたくなる。

 15年前に放送された今作で右京は「社会や柴田のどちらかがもう少しだけだけでも手を差し伸べる勇気があればこのような結末にはならなかった」と結論づけているが、現代日本は良くなったのかそれとも悪くなったのか。考えることは山積みだ。

 間違いなく名作で1度はぜひ観てほしい。特に派遣や福祉に関わる人間は、本エピソードはなぜか毎年年末に再放送されるので、そこで必ず視聴をしていただきたい。ただし、あまりにも暗い作品であるため、繰り返し観ることはお勧めしない。

(文・Naoki)

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【了】

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