呆気ないラストに「物足りない」の評価は的外れ…? 大河ドラマ『光る君へ』最終話の稀有な魅力とは? 考察レビュー
text by アサカシキ
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)が最終回を迎えた。一部で「呆気ない」「物足りない」の声も聞かれる終幕だが、つぶさに見ると、なんとも本作らしさが詰まった素晴らしいものだった。今回はそんな『光る君へ』最終話の魅力を解説する。(文・アサカシキ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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一見物足りないラストの味わい深さ
大河ドラマ『光る君へ』ラストでは、道長(柄本佑)の死後、旅に出たまひろ(吉高由里子)が、双寿丸(伊藤健太郎)ら武者の一団と再会。東国で戦が始まり朝廷側として討伐軍に参加するという彼らを見送りながら、まひろが「嵐が来るわ」と呟くという、意外な終幕だった。
東国の戦とは、「平忠常の乱」(長元元年、1028年)のこととされるが、この、後の武士の時代の到来を予感させる終わり方は、特に日本史に関心が高い視聴者から賞賛を浴びた。しかし一方で、一年を通してドラマを見守って来た視聴者の中には、主人公の人生を描く大河ドラマの結末としては、やや物足りなさを感じた人もいるのではないか。
最終話で象徴的に映し出されたのが、まひろが持っていた鳥かご。第1話で鳥が逃げたあとも長年吊られていたそれは、最終話でまひろが鳥かごを外そうとすると壊れてしまう。そのことをきっかけとしてまひろは、旅立つ決意を固めた。
これまで、まひろと道長は誰にも踏む込むことが出来ない程の深い絆で結ばれていたが、見方を変えれば、その関係性に縛られていたとも言える。終盤にかけてまひろが太宰府へと旅に出た際に、道長から隆家(竜星涼)にまひろを頼むという文が送られていたことからも明らかだが、道長の愛情は、裏返せば執着の証でもある。
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