意外にも明るいラスト…“托卵”という拒否感のある題材でも最後まで入り込めた理由とは? 『わたしの宝物』最終話考察レビュー
text by 西本沙織
松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が完結を迎えた。本作は、「托卵(たくらん)」を題材に、”大切な宝物”を守るために禁断の決断を下した主人公と、その真実に翻弄されていく2人の男性の運命を描く愛憎劇。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:西本沙織】
1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
美羽(松本若菜)と(深澤辰哉)の贖罪
“托卵”をテーマに夫婦のタブーに切り込んだ『わたしの宝物』が、ついに最終話を迎えた。
栞と3人で最後の面会をするため、宏樹(田中圭)を待っていた美羽(松本若菜)。しかし、そこに現れたのは冬月(深澤辰哉)だった。宏樹は栞が実の父親と生きていく選択肢もあると考え、3人を引き合わせたのだ。
動物園を巡る3人は、傍からみれば“家族”に見えたのだろうか。実の父親でありながらも、美羽親子とは微妙な距離を保っていた冬月。ぎこちなくて、でも優しい時間が流れていたその場所には、美羽が思い描きすらしなかった“冬月と一緒に栞を育てる未来”が確かにあったように思う。
別れの間際、美羽に頼んで栞を抱っこさせてもらう冬月。切なさと愛おしさを混ぜ合わせたような面持ちをしていたのは、きっと栞が自分の子だと察していたからに他ならない。
「夏野、この子は俺の子?」と聞く冬月に、美羽は「違うよ、栞は私の子」と返事をする。冬月が精一杯絞り出した「そうだよな そんなわけないよな」は、自分自身に言い聞かせているようであまりにも悲しい。
美羽は“托卵”の罪すべてを引き受ける、冬月はすべてを分かった上で知らないフリをする…それが2人の最後の責任であり、贖罪だったのだろう。冬月は、最後まで栞が自分の娘だと知らされることはなかった。