神木隆之介”鉄平”の晩年が描かれなかった理由とは? ”朝子”の人生に涙と希望を抱いたワケ。『海に眠るダイヤモンド』考察
text by まっつ
22日に感動の結末を迎えた神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語だ。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
序盤の印象を大きく覆したラスト
なぜ涙が止まらないんだろう――。
“ヒューマンラブエンターテインメント”を謳っていた日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)。いづみ(宮本信子)の正体や、鉄平(神木隆之介)とそっくりな玲央(神木隆之介)の血縁関係、そして現代では、鉄平はどこにいるのかなど、幾重にも仕掛けが張り巡らされ、毎週ワクワクさせられた。
だが、最終回を見終えた今、本作の感想は、序盤で抱いたものとは全く異なるところにある。
1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島が舞台となった本作。その触れ込みから、日曜劇場らしい壮大なストーリーになるのだと予感していた。しかし、いざ始まってみると、端島での火事や台風、会社と鉱員による戦いといった“内輪”の事象が押し出されている。
端島に当時いた人たちにとってはきっと忘れられない記憶の数々なのだろう。しかし、部外者にとっては、歴史の教科書を見ても知ることができないかもしれない小さな出来事だ。
もちろん、それに肩透かしを食らって文句を言いたいわけではない。
主役級ぞろいの出演者の確かな演技力によって、ひとつひとつは小さなことに見える事件を、私たちはまるで当事者であるかのように体感した。「一体この先どうなってしまうのだろう」そう思った回数は一度や二度ではない。
22日の放送を終えた今、あれらの出来事を「小さな」などと思う人はいないはずだ。