クライマックスに興奮…最も良い味を出していた俳優は? 映画『室町無頼』評価&考察レビュー。 今こそ観るべきワケは?
text by 近藤仁美
大泉洋が主演を務める歴史アクションエンターテイメント映画『室町無頼』が現在公開中だ。日本で初めて武士階級として一揆を起こした実在の人物を基に、直木賞を受賞した垣根涼介の同名小説が原作となっている。そんな本作の魅力と、鑑賞ポイントを徹底解説する。(文・近藤仁美)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:近藤仁美】
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強~知らないとヤバい事~』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。2023年、「TriviaHallofFame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『人に話したくなるほど面白い!教養になる超雑学』(永岡書店)など。
疫病と飢餓の荒れた時代に立ち上がる武士たち
本作は、その名のとおり室町時代の日本を舞台とする物語だ。疫病と飢饉、権力者の無策により荒れた世の中で、武士階級として初めて一揆を起こした実在の人物・蓮田兵衛と、その仲間たちの熱い戦いを描いた作品だ。
原作は、直木賞作家・垣根涼介の「室町無頼」(新潮社 2016)。メガホンをとったのは、『ジョーカー・ゲーム』(2015)や『あんのこと』(2024)などで知られる入江悠である。
一般にやや地味な感がある室町中期を、どのように料理するのか。私の鑑賞の動機はそこだったのだが、見事なアクションから群衆がそれぞれの強みを活かして一揆を盛り立てていく様まで、実に見応えのあるエンターテインメントに仕上がっていた。
特に良い味を出していたのは、主人公の蓮田兵衛(大泉洋)に拾われる少年・才蔵(長尾謙杜)と、兵衛の友人で宿敵でもある骨皮道賢(堤真一)だ。
才蔵は身寄りがなく、悪徳僧侶の用心棒として生きていた。擦り切れ、踏みつけにされて、人としての希望や尊厳まで奪われかけていたが、兵衛との出会いで救われ、厳しい修行を経て成長していく。特に秀逸だったのは、悔しさややるせなさの表現だ。よく掘り下げられた応援したくなるキャラクターだった。