城定秀夫監督の最新作『嗤う蟲』が公開中。本作は、田舎移住を夢見た若い夫婦が「ムラの掟」に縛られ、追い詰められていく姿を描いた作品だ。今回は、本作の主演・深川麻衣さんと共演の若葉竜也さんにインタビューを敢行。城定秀夫監督の演出や撮影の裏側、“村八分”をテーマにした本作について、たっぷりお話を伺った。（取材・文：斎藤 香）

城定監督への期待と挑戦

―――本作へ出演依頼があったときのことについて教えてください。

深川麻衣（以下、深川）「城定秀夫監督の映画にぜひ出演したいと思いました。また『嗤う蟲』のような、人間の怖さと哀しみを凝縮したような映画に出演するのは初めてなので、新たな挑戦になると思ったことも大きいです」

若葉竜也（以下、若葉）「城定監督にすごく興味があったんです。メジャーな作品もありますが、僕の中ではアンダーグラウンドな世界を描く監督のイメージがありました。そんな城定監督が、深川麻衣という俳優をどのように撮るのかと興味がありました」

―――それぞれが演じられた役について、どのように解釈をして演技に結びつけていったのでしょうか？

深川「杏奈は都心を離れて田舎暮らしをすることになるけど、イラストレーターの仕事は続けたいという強い意志を持った女性です。好き嫌いもはっきりしているし、自分の感情と行動がつながっていて、自分に正直な女性だと思いました。

後半は母親になり、彼女も変化していくのですが、母親として子供をとりまく環境に過敏になる感情の起伏のバランスは、私自身が子供を産み育てたことがないので、母や友達に話を聞いたり、城定監督にも相談したりしながら演じました」

若葉「僕は、自分が演じた輝道という男のことがあまり好きではなかったです。彼は、目の前で起こるさまざまなことにちゃんと向き合わず、ヘラヘラと誤魔化しながら生きてきたんだろうと思いました。

田舎暮らしに憧れて、深川さんが演じる妻の杏奈と麻宮村に引っ越してきて大変な目に遭いますが、それも事前に調べておけば知ることはできたと思うんですよ。でもそれをしないのが輝道。彼のような人は現実にもいますから、『輝道のような人っているよな』と思いながら演じました」