改変が天才的…最も成功した「エンタメ小説の映画化」(4)親友を交通事故で亡くした少女に扮した天才女優は?
text by ばやし
人気小説を原作とした映画は数あれど、原作の魅力を損なわず1本の映画として新たに再構成するのは案外と難しい。そこで今回は、人気エンタメ小説の実写化に成功した映画を5本セレクト。なかでも短編小説や群像劇を主体とした名作にフォーカスしてご紹介する。第4回。(文・ばやし)
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原作の魅力を損なうことなく、キャスト陣の名演が堪能できる良作
『ツナグ』(2012)
監督:平川雄一朗
脚本:平川雄一朗
キャスト:松坂桃李、樹木希林、佐藤隆太、桐谷美玲、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、別所哲也、本上まなみ、浅田美代子、八千草薫、仲代達矢
【作品内容】
男子高校生の歩美(松坂桃李)は、祖母アイ子(樹木希林)から大切な人を亡くしてしまった者と死者を引き合わせる特殊な職業「ツナグ」を引き継ぐ過程で、死者との再会を切に願うさまざまな人々と出会い、成長していく…。
【注目ポイント】
辻村深月の小説のなかでもっとも早くに実写映画化されたのが、2012年に公開された『ツナグ』だ。
大切な人を亡くした者と死者を、一度だけ対面させることができる特別な能力をもつ職業「ツナグ」を祖母から受け継ぎ、さまざまな人々の再会を目の当たりにする主人公・歩美を松坂桃李が演じている。
ストーリーは比較的、忠実に原作をなぞって描かれている。もちろん削られているエピソードや細やかな改変はあるものの、キャスト陣はそれを補って余りある演技を披露していた。
特に短編集のなかでも異彩を放つ「親友の心得」に登場する、女子高生・嵐美沙を演じる橋本愛の渾身の演技が目をひく。同じ演劇部で仲が良かったにもかかわらず、喧嘩別れしてしまった親友を交通事故で亡くす難しい役どころではあったが、当時16歳ながら彼女の葛藤と喪失を憑依させたような表情は圧巻だった。
さらに、今は亡き名優・樹木希林の類まれなる演技を堪能できる作品でもあるので、原作を読んだ人にも、ぜひ一度は目を通してほしい映画になっている。
(文・ばやし)
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【了】