ドラマ版ではあり得ない展開も…ファン大絶賛の理由とは? 『劇映画 孤独のグルメ』評価&考察レビュー【ネタバレあり】
松重豊主演の『劇映画 孤独のグルメ』が大ヒット公開中だ。シーズン10まで続く傑作ドラマシリーズを映画化した本作は、松重演じる井之頭五郎が、仕事で訪れた土地で食事を楽しむ様子を描いたグルメドキュメンタリードラマだ。今回は、そんな本作の魅力を解説していく。(文・ZAKKY)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
※本レビューでは映画の内容についてのネタバレがあります。鑑賞前の方はご注意ください。
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ドラマ版ではあり得ない展開…。
ファン待望の劇場版だが、ドラマ版とは別物のパラレルワールドとみなすべきではないか。それが筆者の見解である。
物語は、井之頭五郎(松重豊)が、かつて親交のあった女性の娘であるフランス在住の松尾千秋(杏)に呼ばれ、絵画を千秋の祖父・一郎(塩見三省)の元へ届けるところから始まる。千秋が五郎を頼った背景には、「困ったことがあったら井之頭五郎に頼れ」という母からのメッセージがあった。
この時点で、良くも悪くも違和感を覚えた人も多かったのではないだろうか。
そう、これまで、家族構成もわからなければ、過去の恋愛を匂わせる描写など皆無であった井之頭五郎という人物に、いきなり「元恋人」という存在をぶっこんできたわけである。これには、筆者だけではなく、全『孤独のグルメ』ファンが、おったまげたのではないか。しかし、安心してほしい。千秋の母との思い出が掘り下げられることはなく、過去の話はその後、描かれないからだ(じゃあ、なんでそんな意味深な設定を出したんだ…というツッコミはしないでおこう)。
そして、五郎は、千秋の祖父から「母が作ってくれた『いっちゃん汁』をもう一度食したいのだが、食材がわからない。調べてくれ!」と無茶ぶりをされる。「食のプロではないので…」と一度は丁寧に断る五郎であったが、結局押し切られ(あるいは、好奇心に駆られ?)フランス、長崎県、韓国、東京と、国境をまたにかけて奔走するのだが、またまたドラマ版のファンがおったまげる展開がこの道中で起こる。
食材を探すために長崎県・五島列島に足を運んだ五郎だが、ひょんなことから海難事故といっても完全に自業自得であるのだがに遭い、韓国の名も知らぬ島に漂流する――――。
五郎は海辺で「腹が減った」と、貝とキノコを採取し、火にかけ、食する。すると、毒キノコに当たったのだろうか、突然身体を震わせ、泡を吹き、ぶっ倒れてしまうのだ。
このような展開はドラマ版ではまずありえない。賛否が分かれるところだが、個人的には、バカバカしさが好ましく、「劇映画なんだから、これくらいやらないと!」といった作り手の気概を感じることができた。