「阿部寛さん演じる折本は私たちの象徴」映画『ショウタイムセブン』渡辺一貴監督、単独インタビュー

text by 山田剛志

韓国で大ヒットを記録したソリッドスリラー『テロ, ライブ』を原作とした映画『ショウタイムセブン』が2025年2月7日(金)より全国公開される。阿部寛を主演に迎え、竜星涼や生見愛瑠、井川遥、吉田鋼太郎などが出演する話題作だ。メガホンをとったのは、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の渡辺一貴監督。今回は、渡辺監督にインタビューを敢行。作品に込めた思いを伺った。(取材・文:山田剛志)

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「原作が持っているパッションを大切にして映画を作りたい」
オリジナルへの敬意

渡辺一貴監督、写真:武馬怜子
渡辺一貴監督、写真:武馬怜子

―――本作は2013年の韓国映画『テロ,ライブ』を原作としています。今回、渡辺監督は脚本も手掛けられております。『テロ,ライブ』の舞台を日本に移し替え、映画として成立させる上でどのようなことを意識されましたか? 
 
「『テロ,ライブ』は、全編がラジオスタジオという限定された空間で映画を成立させていて、ストーリーテリングの力強さには驚嘆すべきものがあります。そのパッションを大切にして映画を作りたい。しかし、ただ真似するだけじゃダメです。そこで、舞台をラジオスタジオに限定するのではなく、物語後半の設定を、阿部寛さん演じる主人公・折本が復帰を熱望するテレビショーに移したら面白いのではないかと思ったんです。そうすれば、原作の世界観を別の形で豊かに広げることができるのではないかと。そうしたコンセプトで全体の枠組みを作っていきました」

―――原作の精神を大切にしつつ、時代性や日本というお国柄に合わせて独自のアレンジを加えていったのですね。
 
「シナリオ作りは、『テロ,ライブ』のシナリオを採録するところから始めて、使えるところはベースにさせていただきつつ、そのままでは使えないところはアレンジする、という形で進めました。特に前半の流れは原作を踏襲していますから、そこはしっかりとリスペクトしつつ、後半、舞台が変わったところでオリジナルの展開を盛り込んでいこうと」

―――本作は娯楽映画として成立していると同時に、政治家の汚職や、国民の政治不信とそれに起因するテロリズムの問題といった、ここ2〜3年、日本においてもアクチュアルなテーマが取り上げられています。本作を作る上で、具体的な社会問題をモデルにするという意識もあったのでしょうか?

「韓国のオリジナル版を現代の日本に置き換えていく上で、舞台となる報道番組は当然様々な社会問題を扱いますから、それをある程度盛り込む必要はあったのですが、具体的な事件や、具体的な人物をモデルにしたということはありません。今回の映画で描かれているような贈賄事件など、今に始まった話じゃないので。もしかしたら見る人によっては具体的な事件を想起するかもしれませんが。今回の作品で一番大事なのは、折本が限られた時間の中でどんどん追い込まれて、次々と困難な課題を与えられ、その場で試行錯誤しながら、エンターテインメントとして自分なりの答えを出していくプロセスにある。そこが面白さの肝だと思うので、僕個人としては、社会性は副産物として捉えています」

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