最もショッキングな「依存症」を描いた映画は? コワい洋画(1)精神崩壊描写がリアルすぎる…屈指の「鬱映画」
特定の物質や行動に心を奪われ、やめたくてもやめられない…。ストレスから逃避するため、一度、酒や非合法の薬に頼ってしまうと一生取り返しのつかないことになる。今回は、そんな依存症をテーマにした映画を5本セレクト。作品内容と見どころを解説する。第1回。(文・阿部早苗)
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薬物に溺れていく人々の末路
『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
【作品内容】
未亡人のサラはテレビ出演の依頼をきっかけにダイエットを始める。一方、息子のハリーは友人とヘロインを手に入れるため麻薬売買に手を出していた。やがてサラとハリーたちは薬物中毒に陥り、悲劇を迎える。
【注目ポイント】
映画『ブラック・スワン』(2011)『ザ・ホエール』(2023)などで知られる監督ダーレン・アロノフスキーが、ヒューバート・セルビー・ジュニアの小説を原作に、ドラッグ依存に陥る人々が見舞われる悲劇を描いた衝撃作だ。
ニューヨークを舞台に、4人の登場人物が薬物に溺れていく様と、とんでもないラストを迎えるいわゆる「鬱映画」。
登場人物はヘロイン中毒者で、麻薬売人をしながら夢を追い続けるハリー。ハリーの恋人で次第に薬物に依存していくマリオン。ハリーと共に麻薬の取引に関わるタイロン。そしてハリーの母親でダイエット薬を使いすぎた結果、幻覚症状に苦しむことになるサラだ。
特にサラは自分がテレビに映ることに異常に執着しており、幻覚と現実が交錯していく場面は、彼女の精神が崩壊していく様をリアルに描いている。
また、ハリーたちもそれぞれ悲劇的なラストを迎える。ハリーに関しては、注射による薬物摂取を繰り返した挙句、腕に感染症を引き起こし、最終的に病院で腕の切断を余儀なくされる。薬物依存の代償はとてつもなく大きい。
本作は、ドラッグ依存に陥る人物たちの心情を深く掘り下げ、決して美化することなくその恐ろしさを伝えている。
登場人物たちは、それぞれ異なる背景や夢を持っているが無惨に崩れ落ちていく。映画はその過程をリアルに描写しており、さらに監督自ら名付けた「ヒップホップ・モンタージュ」の高速映像によって薬物摂取の影響を視覚的に伝えるシーンはどれもインパクトがある。
依存症がいかにして人生を破壊するのかを強く訴える作品といえるだろう。
(文・阿部早苗)
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【了】