映画『ファーストキス 1ST KISS』、ラストシーンを感動的にした松村北斗の声の魅力とは? 評価&考察レビュー

text by ばやし

『花束みたいな恋をした』(2021)の坂元裕二が、塚原あゆ子監督と初めてタッグを組んだ映画『ファーストキス 1ST KISS』が公開中だ。妻がタイムスリップして若き日の夫ともう一度恋をするラブストーリー。今回は、作品の魅力を掘り下げるレビューをお届け。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

坂元裕二とタイムトラベルものの親和性

松村北斗【Getty Images】
松村北斗【Getty Images】

 15年という月日は、運命的な出会いによって恋に落ちたふたりが、日々生活をともにするなかでお互いの欠点を見つけ合い、熱した心を冷めさせていくのには十分な時間である。

 映画『ファーストキス 1ST KISS』は、そんな15年の夫婦生活を営んだふたりがもう一度、恋に落ちる瞬間からやりなおすチャンスに出くわすタイムトラベルラブストーリーだ。

 本作品で脚本×監督としてタッグを組んだのは、映画『怪物』(2023)でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した坂元裕二と、昨年公開された『ラストマイル』『グランメゾン・パリ』(2024)の大ヒットが記憶に新しい塚原あゆ子監督。

 言わずと知れたラブストーリーの名手である坂元裕二だが、意図的にファンタジーの要素を物語に組み込むのは珍しい。ただ、そもそも坂元裕二の脚本がタイムリープ作品とマッチしないわけがないのだ。

 確立された世界観にちりばめられた言葉が、気付かぬうちに会話に組み込まれては、時間を越えて重要な意味を帯びていく。坂元裕二脚本の真骨頂とも言える価値観のズレが引っかかる会話劇と伏線を回収していくストーリー展開は、まさにタイムトラベル作品の面白みとも一致する。

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