「作り手目線ですごくいい設定だと思った」映画『死に損なった男』主演・水川かたまり、共演の正名僕蔵、対談インタビュー
空気階段・水川かたまりが初主演を務める映画『死に損なった男』が2月21日(金)より公開される。本作は、タイミング悪く死に損なった主人公・一平(水川かたまり)の前に男の幽霊(正名僕蔵)が現れるという筋書きを持つ一筋縄ではいかない、ユニークな映画となっている。今回は、水川さんと正名さんにインタビューを敢行。撮影の裏話を伺った。(取材・文:山田剛志)
水川かたまり「作り手目線ですごくいい設定だと思った」
―――お2人は本作で共演される以前に面識はありましたか?
水川かたまり(以下、水川)「面識はなくて、今回の現場ではじめましてでした」
正名僕蔵(以下、正名)「衣装合わせとかじゃなくて、現場で初めてお会いしましたよね」
―――本作の脚本を初めて読んだ時の印象をそれぞれ伺えますでしょうか。
水川「僕は、コントのネタを考えるときに、設定から考えるんですけど、今回の脚本は、作り手目線ですごくいい設定だと思いました。主人公が駅のホームで死のうとしていたら、隣の駅で人身事故があって、命拾いする。すると後日、事故で亡くなった男の幽霊が目の前に現れる。自分がネタを考えている時にこの設定を思いついたとしたら、『やったぞ』と歓喜するだろうなと」
正名「私も、まず設定が秀逸だと思いました。また、物語も想像を超えた展開の仕方をするので、読んでいて驚かされましたね。私は、仕事柄、舞台、映画、ドラマとジャンルを問わず、様々な脚本を読ませていただくのですが、特に今回は、読んだ後の余韻が強く残る脚本だと思いました。
その理由を考えると、この作品は起承転結に沿って色々な出来事が起こるわけですが、あえて一から十まで説明されてないような気がするんですよね。観る人に委ねる部分をあえて作っていらっしゃるんじゃないかなと。観終わった後に色々考えるのが楽しい。そんな余韻が残る映画になりそうだなと、脚本を読んだ時に思いました」
―――水川さん演じる一平は冒頭から絶望しているわけですけど、その理由はセリフではなく、具体的な表情や身振りで表現されています。お2人のお芝居は、今、正名さんがおっしゃった、余白の部分を上手く表現しているように思えます。
正名「ありがとうございます」
水川「嬉しいこと言ってくれる…恥ずかしいです(笑)」
―――哀しさの中にある笑いや、笑いの中にある哀しさ、本作には複数の感情を同時に呼び起こすような側面があると思いました。クランクイン前に田中監督とは、映画の世界観を共有する上でどのようなやり取りをなさいましたか?
正名「(かたまりさんに)クランクイン前に監督と話されました?」
水川「衣装合わせの時に本読みをする機会があって、その時にいろいろと」
正名「そうだ、私は参加できなかったんだ」
水川「そうですね。正名さんはいらっしゃらなかったですけど。本読みの際に、田中監督から『声のトーンはこのくらいがいいですね』などとご指示をいただいて。演じる上で軸となる部分を共有していただきました」
―――本読みを通して、関谷一平のテンションを掴んでいったと。
水川「あとは、衣装を手がかりにキャラクターについて考えることもあって。一平はよくカーディガンを着ていますけど、自己主張したくてもできないことが多い人なのかなと。あくまで個人的なイメージではありますけど」
―――確かに一平は衣装から繊細な雰囲気が感じ取れる気がします。一方、森口の衣装もとても印象的でした。
正名「脚本を読んで自分が勝手に思い描いた森口のイメージは、引退した高校教師ということで、縁側で盆栽の手入れをしてるおじいちゃんに近いものだったんです。地味な衣装をイメージしていたんですけど、衣装合わせを進めていくうちに、高校生が着ていそうなジャージにスラックスを合わせて、黄色いオニツカタイガーをコーディネートするって、ちょっとこれ、どういうこと? と思って(笑)。
多分、パッと見た時に『ああ、そういう人ね』と、イメージが読み取りづらいキャラクターを狙われているのかなと。面食らいつつも、『ああ、こういう方向も確かに面白いかも』って、衣装から役のイメージを膨らませていただいた部分が多かったですね」