映画『名もなき者』考察&評価レビュー。ボブ・ディラン役で光る、ティモシー・シャラメの音楽的素養とは? 魅力を徹底解説
text by 灸 怜太
名匠ジェームズ・マンゴールドが、主演にティモシー・シャラメを迎えて世界に送り出す最新作『名もなき者/ACOMPLETE UNKNOWN』が 公開中だ。歌手として初めてノーベル文学賞を受賞した天才・アーティスト、ボブ・ディランの伝記映画の魅力を解説する。(文・灸 怜太)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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天才シンガーの光と影
実在の人物をテーマにした伝記映画は2種類ある。取り上げられる本人、もしくは遺族などから許可を得た作品と、そこを踏まえないで作ったものだ。
映画になるくらいの人物なのだから、その人生には光と影があり、今となってはあまりオモテに出したくないようなエピソードもあるだろう。そのあたりにどう踏み込めるかが、許可のアリ・ナシで変わってくると思われる。
『名もなき者』は、ノーベル文学賞を受賞した伝説のアーティスト、ボブ・ディランの衝撃的なデビューから数年間を描いた伝記作品だ。
音楽アーティストの伝記映画だと、楽曲を使用するためにも本人許可はマストといえるので、本作はガッチリ許可済み。ボブ本人が脚本に対して修正を加えたのは、実名で登場していた恋人の名前を変えることだけだったという。
1961年のニューヨーク。まだ“名もなき者”であるロバート・アレン・ジマーマンが、敬愛するフォークシンガー、ウディ・ガスリーの病室にふらりと現れる。同じ病室に見舞いに来ていたフォーク歌手のピート・シーガーに促されて曲を披露したロバートはその才能を見出され、やがてボブ・ディランとしてデビュー。圧倒的な世界観を持ったスターへの階段と昇っていくという、実話に基づくストーリーが展開する。