最も毒親の役が上手かった日本人女優は? トラウマ級の名演(2)観ていて辛くなる…“痛い芝居”の素晴らしさ

text by 野原まりこ

ここ10年で“毒親”という言葉はすっかり世間に定着した。毒親を描いた映画は多く、中には鮮烈な描写で観る者に嫌悪感を惹起するものも…。もちろんそうしたネガティブな反応は描写や芝居の力の賜物であり、同じような悲劇が現実で繰り返されないように啓発する意義を持つ。そこで今回は、毒親の役を演じて強烈なインパクトを放った女優を5人セレクト。芝居の魅力を解説する。第2回。(文・野原まりこ)

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親の愛を渇望する息子が記した実話

吉田羊『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018)

吉田羊
吉田羊【Getty Images】

監督:御法川修
脚本:大谷洋介
原作:歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」
出演:太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野花

【作品内容】

 一流企業に勤めるタイジ(太賀)は、幼い頃に母・光子(吉田羊)から虐待を受けていた。本心を隠すように生きてきたタイジだったが、心を許せる友人と出会ったことで、母と向き合う決意をする。

【注目ポイント】

 吉田羊が小さい子どもに容赦無く手をあげる母親を演じた本作。息子に吐き捨てるように「気持ち悪い」と口にするシーンは、観ていて心苦しくなる。目を背けたくなるような虐待シーンもあり、観るのになかなか体力を使う作品でもある。

 しかし、吉田が演じる光子は、ただいたずらに横暴なだけのキャラクターではない。子どもへの愛情の注ぎ方がわからない彼女にとって暴力は、失敗したコミュニケーションであり、吉田は本人にも制御できない何かに突き動かされ、毒親的な振る舞いをしてしまう母親の葛藤を繊細な演技で表現している。

 登場人物の心情をヴィヴィッドに描いた本作は、ただいたずらに暴力シーンを描いた映画よりも、数倍、痛い気持ちになる。主人公・タイジを演じる仲野太賀の演技も文句なしに素晴らしい。テーマやストーリーもさることながら、それを体当たりの芝居で表現する役者の演技にも注目したい一作だ。

(文・野原まりこ)

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【了】

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