なぜ人は復讐劇に魅了される? 映画『リボルバー』評価&考察レビュー。古い価値観を覆す、女性ハードボイルドの魅力を解説
text by 青葉薫
イ・チャンドン監督作品『シークレット・サンシャイン』(2007)をはじめ、数々の名作に出演してきた女優のチョン・ドヨンが、オ・スンウク監督とタッグを組んだ犯罪映画『リボルバー』が公開中だ。今回は本作の魅力に迫るレビューをお届けする。(文・青葉薫)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:青葉薫】
横須賀市秋谷在住のライター。全国の農家を取材した書籍「畑のうた 種蒔く旅人」が松竹系で『種まく旅人』としてシリーズ映画化。別名義で放送作家・脚本家・ラジオパーソナリティーとしても活動。執筆分野はエンタメ全般の他、農業・水産業、ローカル、子育て、環境問題など。地元自治体で児童福祉審議委員、都市計画審議委員、環境審議委員なども歴任している。
復讐劇が求められるワケ
人はなぜ復讐劇に魅了されるのか。映画や配信ドラマはもちろん、電子コミックでは軒並み不倫やいじめに対する復讐劇がランキングの上位を占めている。
厳しいコンプライアンスに対するカウンターカルチャーか。あるいはフィクションのクズキャラならいくら誹謗中傷しても咎められることがないからなのか。それは「バイオハザード」のゾンビが殺し放題なのと同じ理屈なのだろうか。
もちろんその魅力は理解できる。被害者と加害者の心理的な駆け引きが生み出す緊張感。復讐する被害者もまた悪に手を染めることになるという道徳的葛藤。そして、不正や悪事が裁かれないまま横行している現実社会の鬱憤を復讐劇が晴らしてくれることも。
それでも——情状酌量の余地もないほど骨の髄まで腐りきったクズに容赦ない鉄槌を喰らわせ、完膚なきまでに叩きのめす主人公にスカッとする。日常のストレスが吹き飛んでいく――そんな作品を好んで見ている人たちがどれだけストレスを抱え込んでいるのかを想像すると少しだけ怖くなる。かくいう自分自身の内なる凶暴性も含めて。