大河ドラマ『べらぼう』第10話考察&感想。小芝風花が魅せた花魁・瀬川が忘れられない…2人の恋が永遠になったと言えるワケ【ネタバレ】

text by 苫とり子

横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第10話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

蔦重(横浜流星)が瀬川(小芝風花)のために唯一できること

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第10話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第10話 ©NHK

 NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の記念すべき第10回では、鳥山検校(市原隼人)に落籍された瀬川(小芝風花)が、ついに吉原を去る。その最後の花魁道中を特等席で眺めていた蔦重(横浜流星)。別れの瞬間にもかかわらず、晴れやかな2人の顔つきを見て、これも1つのハッピーエンドなのではないかと思わされた。

 親父たちからの依頼で、瀬川最後の花魁道中に合わせて錦絵を制作することになった蔦重。調査に出た先で、自分の本が市中の本屋から取り扱い禁止になり、捨てられていることを知る。

 どうやら、それは地本問屋たちの仕業で、鶴屋(風間俊介)の慇懃無礼な態度に憤慨した親父たちにより、吉原への出入りを禁じられた彼らが腹いせに吉原の悪評を市中に流しているらしい。そのため、ただでさえ世間的に良くない吉原のイメージがさらに悪化。

 どうしたものかと、蔦重は源内(安田顕)と須原屋(里見浩太朗)に相談を持ちかけるのだった。

 そこで、やりたいことをやればいいと源内に言われた蔦重は自分でも馬鹿げていると思うような夢を語る。その夢は、自分の手ではもう幸せにしてやれない瀬川に蔦重が唯一できることでもあった。

 源内は蔦重の切ない願いに胸を打たれるのと同時に、愛しい人の面影を見せてくれた瀬川への恩に報いたいと思ったのだろう。「いいじゃねえか、蔦重! 花魁のために、吉原を皆が仰ぎ見るところに変えてやろうぜ。それこそ、千代田のお城みてえによ」と背中を押す。

 源内の言う「千代田のお城」とは、現在の東京都千代田区にあった江戸城のことだ。その瞬間、蔦重にアイデアの神様が降りてくる。「作った吉原の絵を上様に献上するってのはできねえですか?」と蔦重。実際に上様が見るか見ないかはどうでもいい。大事なのは、上様が見たかもしれないという噂が流れること。

 そうすれば、人々は興味を持つし、「もしかしたら錦絵を見た上様がお忍びで通っているかも?」と勝手に想像してくれたりなんかしたら、吉原はすごいところだという風に今までとは見方が変わる。

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