映画『Broken Rage』は酷評の嵐…それでも「駄作」と切り捨てるべきではないワケ。考察&評価レビュー
text by 司馬宙
北野武が監督・脚本及び、ビートたけし名義で主演を務めた映画『Broken Rage』がAmazon prime videoにて配信中だ。本作は、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに、型破りな演出で撮り上げた作品だ。今回は、北野武のエッセンスが詰まった本作の魅力を紐解いていく。(文・司馬宙)【あらすじ キャスト 考察 評価 レビュー】
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北野武のエッセンスが詰まった問題作
北野武。芸人ビートたけしとして芸能界の頂を極めた後『その男、凶暴につき』(1989)で映画監督デビュー。1997年には『HANA-BI』(1997)でヴェネツィア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞し、近年も『アウトレイジ』シリーズ(2010~2017)でヒットを飛ばすなど、日本を代表する映画監督であることには論をまたない。
そんな北野が約2年ぶりに新作を出す。しかも自身初の「配信映画」で、内容はシリアスとコメディを融合した実験作―。こうなれば、やはり30年来の北野映画ファンとしては観ないわけにはいかないだろう。
しかし本作、残念ながら世間の評判は芳しくない。実際映画情報サービス「Filmaeks」の評価は5つ星中2.9で、映画情報サイト「映画.com」の評価に至っては5つ星中2.1と半分を割っている。加えてコメントも「駄作」「つまらない」「ストーリーがひどい」といった巨匠にはふさわしくないものばかりだ。
実際、私自身も観ていて「ちょっとこれは…」と思うところが少なくなかった。特に後半、コメディパートで繰り出されるベタな笑いの連発には、お笑いのセンスをアップデートできていない北野の姿に一抹の寂しさを感じたのは否めない。
とはいえ本作を「駄作」の一言で片づけるのは早計だろう。なぜなら、(出来はさておき)本作には彼のフィルモグラフィのエッセンスが凝縮されているからだ。