『劇場版 モノノ怪 第二章 火鼠』考察&評価レビュー。「名探偵コナン」初代プロデューサーが語る、神谷浩史の凄さとは?
text by 諏訪道彦
2024年7月に初のアニメ映画が公開され、驚異のロングラン上映を記録した『劇場版モノノ怪』。その続編となる第2章『劇場版 モノノ怪 火鼠』が現在公開中だ。プロデューサーとして数々の名作アニメを世に送り出してきた諏訪道彦さんに作品の魅力を解説していただいた。(文・諏訪道彦)【あらすじ キャスト 感想 考察 レビュー】
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【著者プロフィール:諏訪道彦】
1959 年愛知県生まれ。「シティーハンター」「名探偵コナン」「犬夜叉」など企画・プロデュース。劇場版「名探偵コナン」シリーズは23作目「根性の拳」まで企画・プロデュース。2023年10月「株式会社アスハPP」設立。現在は引き続き新作アニメーションの企画プロデュース業を行う。現在大阪芸術大学芸術計画学科教授。
『モノノ怪』が描く“和”の新境地
強烈な色彩美を放つ予告編に魅せられて前作「劇場版モノノ怪 唐傘」を観たのは昨年8月のこと。その時にも予告されてた次回作「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」、しっかりと観賞させていただきました。これがまた前作を超える絵巻物、のような超絢爛豪華な映像世界。しばらくはそちらの世界へ浮遊侵入する気持ちになったのは事実です。
実は2007年からという歴史を持つこのシリーズ、前作も含めて時を経てここ数年でまた新たな映像世界を生み出す事に成功しています。どうにも人の目を惹く“カラフル”という言葉を乗り越える色彩美の連続。このような世界観を映像に定着させていることに、まずは拍手を送りたい。
アニメーションの進化、とひとことで言いますが、21世紀になってからのそれは、ボク自身「多様化」という言葉で理解しようとしてきました。でもおそらくこの「モノノ怪」シリーズは多様化の中でも“和”に軸を置いた世界の中で、あえて今までに無い奥(ここは大奥じゃないよ)に突き進んでいる。それは見事なチャレンジであり、クリエイターの実力はもちろん、それをカバーしてあまりあるハードエリアのおかげかと。