最も毒親の役が上手かった日本人女優は? トラウマ級の名演(5)痛々しい…従来のイメージを覆す衝撃の演技は?
text by 野原まりこ
ここ10年で“毒親”という言葉はすっかり世間に定着した。毒親を描いた映画は多く、中には鮮烈な描写で観る者に嫌悪感を惹起するものも…。もちろんそうしたネガティブな反応は描写や芝居の力の賜物であり、同じような悲劇が現実で繰り返されないように啓発する意義を持つ。そこで今回は、毒親の役を演じて強烈なインパクトを放った女優を5人セレクト。芝居の魅力を解説する。第5回。(文・野原まりこ)
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歪んだ親子愛が生み出した衝撃の実話
長澤まさみ『MOTHER マザー』(2020)
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣、港岳彦
出演:長澤まさみ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、荒巻全紀、大西信満、木野花、阿部サダヲ
【作品内容】
シングルマザーの三隅秋子(長澤まさみ)は、ろくに仕事もせず、男を取っ替え引っ替えしていた。息子の周平(奥平大兼)はそんな秋子におとなしく従い続け、詐欺を働くようになる…。
【注目ポイント】
“長澤まさみ×毒親”のインパクトで世間に大きな影響を与えた本作。これまで作品に合わせて清純さや妖艶さを巧みに使いこなし、数々の名作に貢献してきた長澤まさみだったが、本作で新境地を開拓。役者としての引き出しの多さを世間に知らしめた。
長澤が演じた秋子は、シングルマザーとして息子の周平を育ててきたが、困ったことがあるとすぐに両親に金をせびり、自身を咎める声には聞く耳を持たない。息子の前で女であることを隠すことなく男にしなだれかかる姿は、痛々しいと言う他ない。
2014年に起きた川口祖父母殺害事件のルポタージュ『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(山寺香、ポプラ社)を原案としている本作において、堅実な両親のもとで育った秋子が周りを巻き込みながら堕ちていく様は、長澤まさみ本人がもつカラッとしたイメージと化学反応を起こし、映画に稀有なリアリティをもたらしている。
(文・野原まりこ)
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