『晩餐ブルース』第9話考察&感想レビュー。休むのは簡単なようで難しい…ドラマが伝える一貫したメッセージとは?【ネタバレ】

text by 苫とり子

井之脇海&金子大地がW主演のドラマ『晩餐ブルース』(テレ東系)が、毎週水曜深夜にて放送中だ。本作は、仕事に忙殺されるサラリーマンと、夢から挫折し人生休憩中のニートが晩ご飯を一緒に食べる”晩活”グルメドラマ。今回は、第9話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

休むのは簡単なようで難しい

『晩餐ブルース』第9話 ©「晩餐ブルース」製作委員会
『晩餐ブルース』第9話 ©「晩餐ブルース」製作委員会

「ゲームのパワーゲージみたいに、自分の余力が目に見える形でわかったらいいのに」と思うことがよくある。自分にはあと、どれほどの力が残っているのか。案外自分ではわからないものだ。気づいたらキャパオーバーになっていることが多い。

 でも、密かに身体や心はサインを出しているもので、優太(井之脇海)の口を突いて出た「疲れたなぁ」という言葉もきっとその一つなのではないだろうか。もっと言えば、第1話で不意に溢れてきた涙も明確なサインだった。

 けれど、耕助(金子大地)や葵(草川拓弥)との晩活を通じて、体にも心にも栄養が行き渡り、優太はまだここから頑張れると思っていたのだ。それなのに、ふと漏れた心の声に優太は戸惑う。

 完全にキャパオーバー。それをあっさり認められたらいいけれど、厄介なのはキャパが人それぞれ持っているキャパの大きさが違うということだ。私たちから見れば、働き過ぎなくらい働いている優太だが、テレビ業界では普通なのかもしれない。先輩ディレクターの木山(石田卓也)も、同期のプロデューサー・上野(穂志もえか)も夜遅くまで働いている。

 それに、おそらく憧れて入ったテレビ業界。監督になるという夢を叶えるのも決して楽ではなかったはずだ。社内の権力争いからは一線を置いているように見える優太だけれど、油断したら後輩に追い抜かれてしまうかもしれないという恐怖はどこかにあるのではないだろうか。

 だから、優太は「疲れたとか言ってる場合じゃないだろ」と自分を奮い立たせて仕事に向かう。でも、普段ならしないようなミスをして自己嫌悪に陥る優太。

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