史上最恐の「日本のヤバい村」映画は? おぞましい怪作(1)虐めの描写がエグい…ジメジメした展開に息が詰まる

text by 阿部早苗

日本映画には、村を舞台に、見過ごされがちな社会の不正や陰湿な風習、閉鎖的なコミュニティが引き起こす恐怖を描き出した「村系ホラー」というジャンルの作品がある。今回は、そんな「ヤバい村」を舞台にした映画をセレクト。異質な空間に潜む人間ドラマを紐解きながら、5本紹介する。第1回。(文・阿部早苗)

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村の悪しき歴史に隠された支配構造

『ヴィレッジ』(2023)

横浜流星【Getty Images】
横浜流星【Getty Images】

監督:藤井道人
脚本:藤井道人
出演者:横浜流星、黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗、古田新太、中村獅童、木野花、西田尚美、杉本哲太

【作品内容】

 山間の村・霞門村(かもんむら)で虐げられながら生きてきた片山優(横浜流星)は、母の借金によりヤクザの仕事を手伝うなど苦悩の日々を送っていた。そんな中、幼なじみの美咲が東京から帰村し、彼の中で何かが変わり始めるが…。

【注目ポイント】

 映画『正体』(2024)で日本アカデミー賞に輝いたのが記憶に新しい藤井道人監督&横浜流星。そんな2人がタッグを組んで2023年に公開された本作は、名プロデューサー・河村光庸の遺作となった作品でもある。

 村の伝統として受け継がれてきた”薪能”の儀式が行われる集落・霞門村(かもんむら)は、ゴミの最終処分場を有する村でもあった。そこで働く優(横浜流星)は母親の借金を返済するため、昼はゴミ処理場で働き、夜は危険物の不法投棄を手伝わされていた。

 このゴミ処理施設を巡る闇が村には存在する。村長は村の資源となる補助金目当てでゴミ処理施設を建設。しかし、この建設には、かつて反対していた村人がいた。それが優の父親だ。建設問題で事件を起こした父親は焼身自殺をし、残された優の家族は村八分となっていた。

 さらに村の裏ではヤクザが関わっており、夜な夜なゴミ処理施設に違法な危険物を不法投棄して稼いでいる。この悪行に関わっているのが村長の息子・徹(一ノ瀬ワタル)だ。優を「殺人者の息子」と蔑み、虐めの対象として暴力を振るい続けている。

 そんな優の日常が一変するのが東京から帰村した美咲(黒木華)の存在だ。ゴミ処理施設の広報担当として勤務し始めた彼女の計らいで優はゴミ処理施設のPRを任される。どん底の人生を送っていた優にも転機が訪れた瞬間だが、美咲に想いを寄せる徹は気に食わない。ここで新たな事件が起きてしまい、やがて優は後戻りできない選択を迫られることになる。

 映画『ヴィレッジ』は、日本のどこかに実在しそうな閉鎖的な村の恐怖をリアルに映し出している。逃げられない闇が根深く息づいている村社会の支配構造が生々しい。村の変化を感じさせる因果応報というべきラストは必見だ。

(文・阿部早苗)

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【了】

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