『地震のあとで』第1話考察&感想レビュー。 村上春樹作品の映像化が困難なワケ 。 意味深なセリフが示唆することとは?【ネタバレ】
土曜ドラマ『地震のあとで』(NHK総合)が放送開始した。映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)の大江崇允が脚本を務める本作は、村上春樹の珠玉の連作短編を原作にした“地震のあと”の4つの物語。今回は、第1話のレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
震災の余波は今もなお誰かの心を波立たせている
理不尽とも呼べる大きな災害に出くわしたとき、漠然とした不安やえも言えぬ虚無感に飲み込まれそうになることがある。その気持ちは、現実に身の回りで起きたときよりも、画面の奥で淡々と流れている映像を見ているときのほうが膨らんでいく気がした。
阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件から30年の節目を迎える2025年。今年、映像化されたドラマ『地震のあとで』は、村上春樹が1999年から綴った連作短編小説「神の子どもたちはみな踊る」が原案となった4つのストーリーが描かれている。
この物語は「地震のあと」の話であり、地震が起きた場所から遠い地で、何か大事なものを失った人々の話でもあった。震源から距離を隔てた場所でも、どれだけの時間が経ったとしても、震災の余波は今もなお誰かの心を波立たせている。
本作の脚本を担当したのは、同じく村上春樹の短編を原作とした映画『ドライブ・マイ・カー』も手がけた大江崇允。
寓話的な世界観や、現実と想像の境目をシームレスに描く村上春樹作品を映像に落とし込むのは非常に困難と言えるが、ドラマ『地震のあとで』の入り口となる第1話「UFOが釧路に降りる」は、今もなお続く曖昧模糊とした恐怖を暗示するうえで、重要な役割を果たす物語だった。