民放ドラマ史上最高の最終回は? スッキリした結末(5)『半沢直樹』を超える…カタルシスが半端ないラストは?
毎年、数多のドラマ作品が制作される中で、放送終了後も語り継がれる名作も多い。名作が名作たる所以、それは「結末」にあると断言して良いだろう。今回は、民放ドラマ史上もっとも視聴者の心に残る最終回をセレクト。物語の内容から作品の魅力に至るまでたっぷりとご紹介する。第5回。(文・阿部早苗)
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胸がすく…最高の結末
『罠の戦争』(2023、カンテレ・フジテレビ系)
脚本:後藤法子
キャスト:草彅剛、井川遥、杉野遥亮、小野花梨、小澤征悦、宮澤エマ、坂口涼太郎、玉城裕規、白鳥晴都、飯田基祐、田口浩正、本田博太郎、高橋克典、片平なぎさ、岸部一徳
【作品内容】
衆議院議員・犬飼孝介(本田博太郎)の第一秘書・鷲津亨(草彅剛)は、20年前に路頭に迷っていた時に助けてくれた犬飼に命がけで尽くしてきた。鷲津の献身的なサポートによって、犬飼は内閣府特命担当大臣にまで上り詰めた。しかし、鷲頭の息子が歩道橋から突き落とされる事件が起きたことで状況は一変。
犬飼から事件のもみ消しを頼まれ、さらには口封じに裏金疑惑をでっち上げられた鷲津は、犬飼への報復と、事件の真相を突き止めるべく次々と罠を仕掛けていく。
【注目ポイント】
2023年1月期に放送された『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)は、『銭の戦争』(2015)、『嘘の戦争』(2017)に続く草彅剛主演の「戦争シリーズ」第3弾。復讐劇を軸に権力闘争の闇を描いたストーリー。
『半沢直樹』(2013、TBS系)を例に出すまでもなく、権力を振りかざす圧倒的強者に対し、弱者が知恵を駆使して立ち向かう物語は、視聴者の共感を得やすい。「戦争シリーズ」も御多分に漏れず、多くの人の支持を得た。
自分のことしか考えていない政治家たちの姿はもちろん、誰が味方で、誰が敵なのか、コロコロと変わるジェットコースターのような展開に目が離せなかった。ドラマ終盤では、息子の事件をきっかけに議員を志した鷲津だったが権力を手に入れたことで次第に政治の闇に落ちていき、ついには妻の可南子(井川遥)との関係も破綻してしまう。
最終回では総理にまで罠を仕掛けた鷲津は配信によって「不正を隠蔽してまで守らなきゃいけない? そんな政治なんて壊れちまえばいいんだよ!」と不誠実な政治家たちに報復を行う。現実世界では権力者の不正を報じるニュースは後を絶たない。「ああまたやっている」とフラストレーションをためるどころか、呆れる人も少なくないだろう。そんな中、フィクションを通じて、不実な政治家にガツンと一発喰らわせてみせた本作の最終回がもたらすカタルシスは半端なかった。
しかしながら、このドラマの真のスッキリポイントは大ラスにある。議員となった可南子が政策秘書の面接に現れ、彼女が鷲津を採用するといった最高の結末で幕を閉じるのだ。
政治をテーマにしたドラマは小難しくて、堅苦しい…。そんなイメージを持っている人にこそ見てほしい作品だ。
(文・阿部早苗)
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