史上最恐の「日本のヤバい村」映画は? おぞましい怪作(2)“三十人殺し”の真実…夜這いに溺れる青年の闇とは
日本映画には、村を舞台に、見過ごされがちな社会の不正や陰湿な風習、閉鎖的なコミュニティが引き起こす恐怖を描き出した「村系ホラー」というジャンルの作品がある。今回は、そんな「ヤバい村」を舞台にした映画をセレクト。異質な空間に潜む人間ドラマを紐解きながら、5本紹介する。第2回。(文・阿部早苗)
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戦時下の日本の暗部を鋭く映す
『丑三つの村』(1983)
監督:田中登
脚本:西岡琢也
原作:西村望
出演者:古尾谷雅人、田中美佐子、五月みどり、大場久美子、池波志乃、原泉
【作品内容】
戦時下の岡山の寒村。秀才と称えられた犬丸継男は、徴兵検査で結核と診断され、村人たちに蔑まれる。恋人・やすよにも見放され、孤立した彼は次第に追い詰められていく。そしてついに、村人への復讐を決行する。
【注目ポイント】
昭和13年に岡山県で実際に起こった「津山三十人殺し」を題材に、古尾谷雅人が主演を務めた『丑三つの村』(1983)。映画『実録阿部定』(1975)などを手がけた日活ロマンポルノのエースとして活躍してきた田中登監督がメガホンを取った作品だ。
舞台は戦時下の寒村。秀才と称えられた犬丸継男(古尾谷雅人)は、徴兵検査で結核と診断され、出兵の夢を絶たれる。村の風習である夜這いに溺れるも、病を理由に次第に疎まれ、恋人にも見放されてしまう。孤立した継男は、やがて村人たちへの復讐を決意。丑三つ時に村人たちを次々と襲い掛かり大量殺戮を決行する。
この映画では津山事件に至るまでの経緯が描かれている中で、当時あったとされる村の独特な風習「夜這い」についても描かれている。
夫が出征中の妻に男性が夜這いを仕掛けるなど、現代の倫理観では考えられない当時の風習が当たり前のように描かれる。主人公の継男は最初、この風習を遠巻きに見ていたが、やがて自分も夜這いを行うようになり、次第に肉欲に溺れていくのだ。
本作は、村社会に根付いた風習をリアルに描きながら、人間の孤独と狂気がどのように生まれるのかを丹念に描写している。閉鎖的な村の掟に従う者と排除される者、そしてその果てに起こるのが悲劇だ。戦時下の日本の暗部を鋭く映し出した作品であり、観る者に強烈な印象を残す。
(文・阿部早苗)
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【了】