ドラマライターが選ぶ、2025冬ドラマでもっとも面白かった作品は? 話題作を語りつくす… 映画チャンネルドラマ座談会【前編】
2025年冬期ドラマを振り返るドラマ座談会を開催。『ホットスポット』(日本テレビ系)や『御上先生』(TBS系)など注目度の高い作品を中心に、3名のドラマライターがそれぞれの魅力を深掘りし、共感ポイントや俳優、脚本の魅力に迫る。ドラマファン必見の座談会レポートをお届け。今回は前編。(文・編集部)
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【出席者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
【出席者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
【出席者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
『ホットスポット』は良い意味で脚本が気持ち悪い
―――今期のドラマは『ホットスポット』と『御上先生』の2作品が特に話題性が高かったかと思います。お三方から見てこの2作品はいかがでしたか?
あまの「『ホットスポット』は言うまでもなくとても面白かったですよね。『ブラッシュアップライフ』(2023、同局)でもあった女子トークのシーンが今回もありましたが、ファミレスとかファストフード店での実際の会話を隣で聞いているような感覚で、バカリズムさんは一体どこからネタを拾ってくるんだと思いました。一方で高橋さん(角田晃広)の正体をバラしてしまうところはアウティングではないかという声もあって、それは確かに…とは思いつつも、あくまでも身内以外には漏れていないのと、高橋さん本人も誰が聞いてるか分からないような場所で話しちゃってもいるので、そこは目をつむってもいいのかな、と思いました」
苫「会話劇もですが、夏帆さんがホテルのオーナーの真似をするのに、一度外に出るけど、その間にお客さんが来たから外で待たなきゃいけないあの間とか、日常でもあるんだけど誰もそこを切り取らない、みたいなことをよく観察していますよね、あと職業の解像度がすごく高くて、小5の担任の話とか、その職に就いた人にしか分からないことが描かれているので、脚本がいい意味で気持ち悪いと思いました(笑)。バカリズムさんがどういう取材をしてどんなメモをとっているのか知りたいです」
まっつ「会話劇が面白いのは前提にあったとして、必要以上に伏線を回収しなかったのが良かったです。登場人物が『E.T.』を知らないとか、1話の野呂佳代さんの正体とか、序盤からここは伏線じゃないかって色々考察されていたけれど、結局、その殆どはなんでもなかった。これは流石にわざとやっていると思っていて、今、考察させるドラマが多い現状へのバカリズムさんの答えではないかと。僕自身、考察系ドラマはあまり好きではないので、ただほっこりおもしろい、ゆっくり見てられる最終回には、新鮮さを覚えました」
あまの「本当に唐突だったのは、山田真歩さんと山本耕史さんぐらいで、それ以外は布石があってちゃんと納得感があるのが気持ち良かったです。あと今期は『御上先生』、『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系)のような何か事柄に対して、セリフ上で説明はするけど明確には映さない演出が多かった気がします。それに対して『ホットスポット』は、脚本の細かさから来ていると思うんですが、ほぼカメラに映った世界で完結しているのに、その世界が広く感じました。私はそれがすごく面白かったです」