『地震のあとで』第2話考察&感想レビュー。堤真一の意味深なセリフがこだまする…村上春樹の原作との違いとは?【ネタバレ】

text by ばやし

土曜ドラマ『地震のあとで』(NHK総合)が現在放送中だ。映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)の大江崇允が脚本を務める本作は、村上春樹の珠玉の連作短編を原作にした“地震のあと”の4つの物語。今回は、第2話のレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

原作リスペクトを欠かさないドラマ『地震のあとで』

ドラマ『地震のあとで』第2話©NHK
ドラマ『地震のあとで』第2話©NHK

 まるで映画を観ているかのような45分間だった。静寂な空間に響く波の音。パチパチと薪が爆ぜる音。そして、夜の帳が下りた砂浜でたったひとつ燃え上がる炎を見つめる時間は、実際にあの場所で彼らとともに過ごしていたのではないかと思うほどの実感を抱かせる。

 ドラマ『地震のあとで』の演出を担当しているのは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013)も手がけた井上剛。同作品でも東日本大震災を描いているが、第2話「アイロンのある風景」では、2011年の大地震が起きる少し前、茨城の海沿いの街でひっそりと営まれていた3人の会話と生活を中心に映し出している。

 前後のストーリーに明確な繋がりがあるわけではないが、登場人物たちがテレビで16年前の阪神・淡路大震災の追悼番組を見つめるカットが挟まれるように、第1話で起きた「地震のあと」の余波は、2011年へと時代を移したあともなお続いている。本作で描かれる人々のどこか空虚な心の内は、どこまでも過去の災厄から地続きにあった。

 さらに、第1話でも印象的にちりばめられていた「宇宙人」や「空っぽ」といったワード、のちに登場する「かえるくん」を模したフィギュアなどが各シーンには盛り込まれており、あくまでも全4話の連作としてストーリーが紡がれていることがわかる。

 原作のセリフが忠実に再現されていたり、村上春樹のエッセイ「辺境・近境」に収録されている「神戸まで歩く」にも登場した「ピノッキオ (PINOCCHIO)」のエピソードがピックされていたり、短編を膨らませながらもリスペクトを欠かさない作品に仕上がっていた。

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