ドラマ『いつか、ヒーロー』第2話考察レビュー。桐谷健太”誠司”の言葉がこれほど響くワケ。現代人が抱え込む心の叫びとは?【ネタバレ】

text by 西田梨紗

桐谷健太主演のドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が現在放送中だ。本作は、20年間消息不明だった謎の男が、夢を失くした若者達とともに腐った大人を叩きのめす不屈の復讐エンターテインメント。今回は、第2話のレビューをお届け。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:西田梨紗】

アメリカ文学を研究。文学研究をきっかけに、連ドラや大河ドラマの考察記事を執筆している。社会派ドラマの考察が得意。物心ついた頃から天海祐希さんと黒木瞳さんのファン。

“自分の存在を認めてほしい”という心の叫び

『いつか、ヒーロー』第2話©ABCテレビ
『いつか、ヒーロー』第2話©ABCテレビ

 本放送では、誠司(桐谷健太)の教え子のうち“ノノ”こと野々村光(泉澤祐希)に焦点が当てられた。ノノは両親から度重なる虐待を受け、5歳のときに児童養護施設・希望の道に入居した。この施設の閉鎖後は里親に引き取られ、サッカーの名門校に入学したものの、一年足らずで中退。里親ともうまくいかず、家を出てホームレスになったという。

 ノノはサッカー選手になる夢が砕けた後も、デイトレーダーや「デイトレーダーのんのんの株講座」の運営(ユーチューバー)などさまざまなことに挑戦してきた。しかし、いずれも生計を立てられるほどには成功しなかった。

 彼は人間関係が不得意なことも、仕事をうまくこなせないこともこれまでの経験から自覚している。しかし、それでも、“いつか、自分は何者かになれるんだ”とあわい期待を抱いているように見える。

 ノノの成功への強い憧れにつけこむ悪意ある者が現れた…。自身のYouTubeチャンネルの動画一覧を閲覧していると、人気YouTuberのトリプルマスクから「是非コラボしたいです。DM待ってます」とコメントが届いているのに気づく。ノノは“これがうまくいけば人生変わるかも”と誠司に話していたように、人生大逆転の期待に胸をふくらませる。

 しかし、トリプルマスクはデイトレーダーとしてのノノを評価し、コラボを依頼してきたわけではなかった。彼らは「国から金もらい優雅に暮らす ヤングホームレスの実態!」というタイトルの動画を配信するために、ノノに近寄ってきたのだ。ノノは自身に関する偽りだらけの動画が配信された後、トリプルマスクの本意に気づいた。

 人は“有名になりたい” “成功したい”と自分の弱さや限界を痛いほど自覚していても、なお強く切望することがある。こんなふうに思うのは自分を過信しているからではなく、むしろ自分の力のなさを自覚しているからかもしれない。“自分の存在を認めてほしい” “誰か私の存在を肯定して”という心の叫びともいえよう。

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