日本映画史上もっとも面白い「創作」をテーマにした作品は?(4)ぶっ倒れるまで描きまくる…脳汁出まくりの傑作

text by 田中稲

作品を生み出すプロセスと職人の情熱が描かれる映画は、まるで社会見学。普段は何気なく見ている作品が、実は気が遠くなるような作業と努力と工夫によって生まれている。それを知れば、世界はもっと愛おしくなり、自分も何か作りたくなる。今回は、様々なジャンルの「創造の現場」をテーマにしたモノづくり映画を5本ご紹介。第4回。(文・田中稲)

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週刊マンガ連載は才能と体力勝負!

『バクマン。』(2015)

佐藤健
佐藤健【Getty Images】

原作:大場つぐみ、小畑健
監督・脚本:大根仁
キャスト:佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー、染谷将太

【作品内容】

優れた画力を持った高校生の真城最高(佐藤健)は、漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)からコンビを組んで漫画家になろうと誘われる。2人は、週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが…。

【注目ポイント】

 週刊マンガ連載。前々から、「描いたらすぐ次」どころか「今の描いている途中もう次」くらいの速さで書かないと成り立たない仕事なんだろうなあ、と想像はしていた。

 が、『バクマン。』を観てクラクラ。想像以上の過酷さだった…。命をすり減らすサイクルではないか(泣)。

 初盤は、青春と希望にあふれているのだ。舞台となるのは週刊少年ジャンプ編集部。実際に編集部で撮影されているシーンもあり、「原稿を持っていき、編集者に見てもらう」胸の高鳴りが聞こえてくるようだ。

 プロジェクションマッピングを使用したマンガの執筆シーンは画期的! アイデアを前のめりにペンに託す興奮が伝わってくるようで、何度観ても飽きない。

 夢に近づくほど、2人に待ち受けるのは、喜びと充実感と、ライバル登場による野心の芽生え。そして、読者アンケートという高い高い山がそびえたち、「継続」の難しさにもがくのである。

 佐藤健演じるサイコーが、マンガ執筆に身心をすり減らし、倒れる姿はリアルでゾッとする。編集長役のリリー・フランキーがまた、「夢の先の過酷さ」にホンモノ感を乗せてくるからたまらない。

 サカナクションの主題歌「宝島」が物語と並走する。大根仁、さすがのリズム感!マンガはこう生まれるのか、という感動だけではない。自分の頭のなかにも、形にしたいストーリーが渦巻いていることを思い出させてくれる、「観るアドレナリン」だ。

(文・田中稲)

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【了】

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