「都合が良すぎる」設定はあえて? 覚悟みなぎる“最も残酷な描写“とは? 映画『片思い世界』ネタバレ考察&評価レビュー

text by かんそう

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務めた映画『片思い世界』が現在公開中だ。本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本・坂元裕二と監督・土井裕泰が再びタッグを組んだ作品となっている。今回は、坂元裕二の過去作を振り返りながら、本作の魅力を紐解いていく。(文・かんそう)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:かんそう】

2014年から、はてなブログにてカルチャーブログ「kansou」を運営。記事数は1000超、累計5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務め、2024年5月に初書籍『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を出版した。

坂元裕二が徹底して描いてきたテーマの集大成

映画『片思い世界』
©2025『片思い世界』製作委員会

 小鳥遊「うん。あの、過去とか未来とか現在とかそういうのそういうのって、どっかの誰かが勝手に決めた事だと思うんです。時間って別に過ぎていくものじゃ無くて、場所っていうか別の所にあるものだと思うんです。

 人間は現在だけを生きてるんじゃない。5歳、10歳、20歳、30、40、その時その時を人は懸命に生きてて、それは別に過ぎ去ってしまった物なんかじゃ無くて。だから、あなたが笑った彼女を見たことがあるなら、彼女は今も笑ってるし、5歳のあなたと5歳の彼女は今も手を繋いでいて。

 今からだっていつだって気持ちを伝えることができる。人生って小説や映画じゃないもん。幸せな結末も悲しい結末も、やり残したことも無い、あるのはその人がどういう人だったかっていうことだけです。

 だから人生には2つルールがある。亡くなった人を不幸だと思ってはならない。生きてる人は幸せを目指さなければならない。人は時々寂しくなるけど、人生を楽しめる。楽しんでいいに決まってる」

 これはドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ、2021)に登場する小鳥遊大(オダギリジョー)のセリフだ。親友のかごめ(市川実日子)を亡くし、失意の中にいたとわ子(松たか子)に、小鳥遊はこの言葉をかける。

 映画『片思い世界』の鑑賞後、私は真っ先にこのシーンを思い出した。

 脚本を手掛けた坂元裕二はインタビューで「棺桶に入れたい作品ができた、と思えた」と語っていたが、映画『片思い世界』は、彼が徹底して描いてきたテーマ「どんなことがあったとしても人生は続く」の集大成的な作品なのではないかと思った。

 ぜひ、『片思い世界』の鑑賞前に坂元裕二作品を観返すことをオススメしたい。前作映画『ファーストキス 1ST KISS』、2021年放送のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、2013年放送のドラマ『Woman』(日本テレビ系)、そして2011年放送のドラマ『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)は最低でも鑑賞してもらいたい。

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