史上最も泣ける日本のアニメ映画は? 最強の感動作(4)なぜ虐めてしまったのか…青春の影を描いた傑作は?

text by 小室新一

現実から逃避したい時、映画はどこまでも空想の世界に連れて行ってくれる。さらにアニメ映画を選べば、実写映画以上に心を開放させることができるかもしれない。アニメの世界に酔いしれて、心を浄化させてみるのも良いだろう。そこで今回は、もっとも泣ける日本のアニメ映画を5本厳選してご紹介する。第4回。(文・小室新一)

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『映画 聲の形』(2016)

山田尚子
山田尚子【Getty Images】

監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
原作:大今良時(講談社コミックス刊)
出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章、金子有希、石川由依、潘めぐみ、豊永利行、松岡茉優

【作品内容】

 ガキ大将の石田将也は、転校してきた西宮硝子へ感心を持つ。彼女へいたずらをすることで、退屈をしのいでいたが、とある出来事をきっかけに将也は孤立することになる。

 それから月日がたち、二人は再会をすることになるが…。

【注目ポイント】

 かつて週刊少年マガジンに連載された大今良時の同名漫画を映画化。監督は山田尚子、脚本は吉田玲子で『映画 けいおん!』などの名作を世に送り出した黄金コンビである。

 少年誌の作品というと、「友情・努力・勝利」に代表されるように、スポ根や冒険、バトル物が多いが、本作は青春の影の部分を描いている。学生生活の中でも、恋愛や部活ではなく、いじめや障害について触れた異色のストーリーである。しかも、いじめられた側ではなく、いじめてしまった側に焦点が当てられているのも興味深い。

 主人公の石田将也は、なぜいじめをしてしまったのか。学校というコミュニティの中に潜む闇が描かれており、実はいじめをしていた彼も被害者なのである。また、西宮硝子も耳が聞こえないという障害を抱えていることで、周りとの付き合い方がわからずにいる。

 成長した少年と、いじめを経験しながらも、障害と共に生きる少女の物語は、とても胸を打つ。いじめ問題だけでなく、傷の癒し方や、本当の友情とは何かも教えられる。

 二人が周囲を巻き込み、成長していく過程は泣けて仕方がない。これほど涙を流しながら劇場を後にした作品はあまり記憶にない。

(文・小室新一)

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【了】

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