ラスト5分で拍子抜けした映画は? 呆気ない結末の名作(1)天才すぎて理解不能…あっけなく間抜けな最期は?

text by シモ

観る者の肩をすかしたり足をすくったりするような驚きのある作品は、刺激的で衝撃的な作品とはまた違った良さがある。今回は、まさかの結末が待っている作品の中から、特にラスト5分で拍子抜けするほどの意外な展開を迎える作品をセレクト。単にガッカリさせられるだけでなく、余韻やメッセージ性が強い傑作もご紹介する。第1回。(文・シモ(下嶋恵樹))

即興演出に裏打ちされた前衛的なラスト

『気狂いピエロ』(1965)

映画『気狂いピエロ』の1シーン。主演のジャン=ポール・ベルモンド
映画『気狂いピエロ』の1シーン。主演のジャン=ポール・ベルモンド【Getty Images】

上映時間:110分
原題:Pierrot le Fou
製作国:フランス、イタリア
監督:ジャン=リュック・ゴダール
原作:ライオネル・ホワイト
脚本:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:ジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ、グラッツィラ・ガルバーニ、サミュエル・フラー、レイモン・ドボス

【作品内容】

「ピエロ」と呼ばれるフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモント)は、退屈で無為な都会での生活に嫌気がさしていた。そんなある日、彼はかつての恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と邂逅、一夜を共にする。

翌朝、目を覚ましたフェルディナンは、家に見知らぬ男の死体を発見。2人は自由を求め、パリから南仏へと逃亡を図る。

【注目ポイント】

ヌーヴェルヴァーグ(フランスを中心に巻き起こった映画運動)の旗手ジャン=リュック・ゴダールの代表作。主演はフランスの名優ジャン=ポール・ベルモントとアンナ・カリーナが務めている。

カメラは手持ちで絵コンテもリハーサルもなし、セリフは本番直前に口頭で役者に伝達ー。数々の即興演出で映画界に新風を吹き込んだゴダール。そんな彼の自由闊達な演出は本作でも随所に見られる。フェルディナンとマリアンヌがアメリカ兵とベトナム人に扮して突然寸劇を始めるシーンや、マリアンヌが突然歌い出すシーンはその最たるものだろう。

そして、本作のラストも、ご多分に漏れず自由で前衛的なものだ。警察に追われながらもお気楽に犯罪を繰り返すフェルディナンとマリアンヌだが、そんな二人にも別れの時が訪れる。マリアンヌの裏切りを悟ったフェルディナンが彼女を撃ち殺してしまったのだ。

自暴自棄になったフェルディナンは、なぜか顔を青のペイントで塗りたくり、ダイナマイトを頭に巻いて導火線に火をつける。ハッと我に帰って火を消そうとしてももう遅い。

「クソ!畜生」

そう言い遺した彼は、真っ青な地中海の青空のもと、晴々しく爆死を遂げるのだ。

あまりにもあっけなく、そして間抜けなこの最期。なぜこんなラストシーンを撮ったのか、ゴダール本人に聞いてみたいところだ。

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【了】

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