いちばん怖いのは人間…史上最恐の“ヒトコワ”系日本映画(5)心を容赦なくえぐる…監禁された姉妹の日常とは?
text by ニャンコ
チャッキーにジグソウ、そして貞子ー。ホラー映画はこれまで世にも恐ろしい「スター」たちを多数輩出してきた。しかし恐いのは妖怪や幽霊だけではない。隣に住むあの人も、突然「モンスター」に変貌するかもしれないのだ。そこで今回は身近に潜む人間の恐怖を描いた「ヒトコワ映画」5本をセレクト。怖いもの見たさを掻き立てる怪作を紹介する。第5回。(文・ニャンコ)
——————————
母親の無表情が生み出す恐怖
『子宮に沈める』(2013)
監督:緒方貴臣
脚本:緒方貴臣
キャスト:伊澤恵美子、土屋希乃、辰巳蒼生、田中稔彦
【注目ポイント】
2010年に発生した大阪2児餓死事件をもとにした社会派ドラマ。監督は『終わらない青』(2009)の緒方貴臣が務める。
狭い部屋の中に監禁された姉妹の日常を、定点カメラで描出した本作。いたずらに加害者を糾弾するのではなく、2人が静かに命を落とすまでの過程を淡々と描出することで、児童虐待や周辺住民の無関心といった社会問題を巧みに表現している。
そして、作中最大の恐怖が、伊澤恵美子演じる母親だろう。一見どこにでもいそうな彼女だが、思わず「なぜここまで何もしないでいられるのか」と問いかけたくなるほどに何もしない。彼女の目の奥の空虚さが、現代の孤立した母親像を生々しく浮かび上がらせており、観客の心を容赦なく抉ってくるのだ。
人は誰しも誰かを助ける力があるのに、その力を持て余したまま日常を過ごしてしまうー。そんなメッセージをひしひしと感じさせる、なんとも身につまされる作品だ。
(文・ニャンコ)
【関連記事】
いちばん怖いのは人間…史上最高の“ヒトコワ”系日本映画(1)
いちばん怖いのは人間…史上最高の“ヒトコワ”系日本映画(2)
いちばん怖いのは人間…史上最高の“ヒトコワ”系日本映画(全紹介)
【了】