ドラマ史上最も”気持ち悪かった”名作は?「攻めすぎ」ドラマ5選。放送コードギリギリ…カルト的人気を誇る珠玉の作品たち
この世には、説明がつかない現象、“超能力”と呼ばれる力や”サイコパス”と呼ばれる人種など、常人には理解し難いモノが存在する。それらを解明することは現段階では難しい。だからこそ我々は“特殊能力”に強く惹かれてしまうのだ…。そこで今回は、不可解な出来事をテーマとした猟奇系ドラマを5本厳選してご紹介する。(文・西本沙織)
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【著者プロフィール:西本沙織】
1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
カルト的な人気を博したダークホラーの名作
『NIGHT HEAD』(フジテレビ系、1992)
原作:飯田譲治
脚本:飯田譲治、笠井健夫、高山直也
監督:飯田譲治
演出:落合正幸、土方政人、本広克行、土坂浩輝
出演:豊川悦司、武田真治
【作品内容】
サイコキネシスの超能力を持つ霧原直人(豊川悦司)、リーディングの超能力を持つ直也(武田真治)の兄弟は、15年間にも及ぶ隔離生活からの脱走に成功する。だが、外の世界は二人が思い描いていた楽園ではなかった。
ただ“普通の生活”を望んでいただけなのに、彼らの力は世に蔓延るマイナスのエネルギーを引きつけ、やがて二人に悪意として降り注ぐ。不思議な力を持つ彼らの、存在意義とは。
【注目ポイント】
「人間は、脳の容量の70%を使用していないと言われている。人間の持つ不思議な力は、この部分に秘められていると考えられている。使用されることのない脳の70%は、こう呼ばれることがある――“NIGHT HEAD”」
飯田譲治脚本のドラマ『NIGHT HEAD』は、なにやら異様なムードを醸し出すオープニングで幕を開ける。今でこそ、ヒーロー的な役割を担いがちな“サイキック”。本作は、そんな彼らマイノリティの苦悩や絶望にフォーカスし、むしろ悲劇的に描いているのが斬新だ。
1990年代は、超能力ブーム真っ只中。特殊な能力が“卓越した力”として注目されるなか、その裏面を浮き彫りにした点でも衝撃を与えた。
惨憺たるシーンが著しいのはスペシャルドラマ『THE OTHER SIDE』だが、連続ドラマ版の視聴後感は各エピソードに後味の悪さを感じてしまう。グロテスクな人間の欲や悪意はもとより、二人が助けようとしても、誰かがむなしく死んでしまったり、同じ力を持つ超能力者が再起不能になったり…。基本的に、誰も救われない。
そんな陰鬱さが惹かれる所以でもあるのだが、それ以上に魅力的なのは、数奇な運命をたどる直人と直也の“兄弟愛”だ。超能力に翻弄されながらも、バケモノだと世間に迫害されながらも、二人は普通に暮らしていきたいと望まれない世界で抗い続ける。豊川悦司と武田真治演じる兄弟がぎゅっと身を寄せ合い、精神的にもたれ合う姿が、儚くて、妖しくて、とても美しいのだ。
『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の「常識酒場」をプロトタイプに、カルト的人気を誇った連続ドラマから、映画、ゲーム、テレビアニメなどのメディアミックス化がなされ、さまざまな形で時代の波をくぐり抜けてきた本作。いつ観ても、決して色褪せることのない名作だ。