『いつか、ヒーロー』第6話考察&感想。“誠ちゃん”と“ハゲタカ”の演じ分けがスゴイ…桐谷健太がハマり役の理由とは?【ネタバレ】
text by 西田梨紗
桐谷健太主演のドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が現在放送中だ。本作は、20年間消息不明だった謎の男が、夢を失くした若者達とともに腐った大人を叩きのめす不屈の復讐エンターテインメント。今回は、第6話のレビューをお届け。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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明かされた誠司(桐谷健太)の過去…。
数々の苦労を乗り越えてたどり着いた今
前回の第5話では、誠司(桐谷健太)が外資系ファンドの一員であり、“失われた30年の生みの親”であることが明らかになったが、本放送では誠司の生い立ちから児童養護施設・希望の道の職員になるまでの人生が明かされた。
誠司は愛情深い両親に恵まれ、父と食事をしながら「ブラックジャガー」を観て育った。しかし、幸せは父が“いい人すぎた”ために長くは続かなかった。彼の父は人が好すぎたゆえに騙され、代々受け継いできた工場を失ったからだ。その後、自ら命を絶ち、母は一年後に病気になった。誠司は世の中と金を恨み、この世界は弱肉強食であると悟った。
誠司を駆り立てたのは“負”の感情であった。経済的に恵まれた同世代と比べればハンディがあったはずだが、アメリカの大学に進学し、投資銀行に入社して株を学んだ。帰国後は会社を次々に買収した。このときの誠司は弱さも甘っちょろい日本も“罪”と思い込んでおり、容赦しなかった。
また、誠司が故郷の工場を買収したことが原因で自殺者が出たとき、彼の妻は高速道路の壁にぶつかって亡くなった。テレビ局の記者であり、誠司の義理の姉である十和子(板谷由夏)は、誠司に姉を殺されたと言っているが、この言い分はあながち間違いではないのかもしれない。
誠司は外資系ファンド時代の自分に本当の強さがなかったことに気付いたが、私たちは人の上に立つ者が偉く、強いと思い込みがちだ。あるいは、自分が二度と傷つかないためには、強くなるしかないと思うこともある。しかし、社会的地位や金銭という名の鎧を着て、砦を築いて自分を守っている限り、強いとはいえないだろう。