【カンヌ現地取材】「映画を作っては反省し、次に繋げての繰り返し」是枝裕和×早川千絵、特別対談レポート
開催中の第78回カンヌ国際映画祭。高級ブランド・ケリング社の女性支援企画「ウーマン・イン・モーション」に、今年のコンペティション部門に選出された『ルノワール』の監督・早川千絵と、カンヌで数々の受賞歴を誇る是枝裕和が登壇。映像業界における女性の立場、そして映画の中で描かれる女性像のあり方について、率直な対話が交わされた。(文・林瑞絵)
ーーーーーーーーーー
是枝裕和&早川千絵が「女性と映画」をテーマに対話
高級ブランド大手の仏ケリングは、文化・芸術の分野で活躍する女性を支援するためのプログラム「ウーマン・イン・モーション」を2015年にスタート。毎年、カンヌ国際映画祭期間中に、映画人をスピーカーに迎えた日替わりのトークイベントを開催している。
今年は本プログラムが10年目を迎える節目の年に。ニコール・キッドマン、シャルロット・ゲンズブール、ダコタ・ジョンソンらに加え、5月16日にはコンペティション部門で『ルノワール』を出品する早川千絵監督と、すでに『万引き家族』(2019)で最高賞パルムドールを受賞している是枝裕和監督が登場。カンヌにゆかりの深い2人が、フランス人ジャーナリストを聞き手に、女性と映画をテーマに語り合った。
今や世界最高峰の映画祭に参加する立場となった早川監督だが、若い時分は監督になることに現実味を持てない時期が続いたと振り返る。「『女性でも映画監督になれますか?』と、周りに質問をしていました。女性監督のロールモデルがいなかったのが、最初の不安です。今の若い世代は、そのように感じてはいないのでは」。また、子供を授かり、自分以外の守るべき存在ができてからは、芸術に没頭することが困難に感じるようになったという。
女性が多数所属する制作者集団・分福を率いる是枝監督も、女性監督の働きにくさを指摘する。
「子育てと仕事の両立が難しいため、キャリアが途切れることを気にする女性が周囲に大変多い。そこをどのようにサポートできるのか。今はベビーシッター代の手当や撮影所内の保育施設の整備などを目指し、働きかけを色々とやっているところです」
キャリアを重ね日本映画界を背負う存在となった是枝監督だが、女性監督がより良い環境で仕事ができるよう、積極的に行動している様子が伺われた。