【カンヌ現地取材】齊藤京子が魅せた“恋と裁き”の名演技──映画『恋愛裁判』カンヌで世界初上映。拍手喝采で迎えられる
第78回カンヌ国際映画祭「カンヌ・プレミア」部門で、深田晃司監督の最新作『恋愛裁判』が公式上映。元日向坂46の齊藤京子が映画初主演を飾り、レッドカーペットでは万雷の拍手が降り注いだ。芸能界の裏側と日本社会を描き出す渾身のオリジナル脚本が、世界の観客の心をどのように捉えたのか。(文・林瑞絵)
「世界で一番幸せ」──レッドカーペットを歩いた齊藤京子の言葉
日本勢の作品が例年以上に多く出揃った第78回カンヌ国際映画祭。有名監督の作品が集まる「カンヌ・プレミア」部門には、深田晃司監督の「恋愛裁判」が選ばれ、現地時間5月22日19時15分より公式上映が行われた。会場入りした深田監督、主演の齊藤京子、東宝の山野晃プロデューサーらは、万雷の拍手で迎えられた。
2016年には「淵に立つ」が「ある視点」部門の審査員賞を受賞し、2020年には「本気のしるし」が公式作品に選出されるなど、カンヌとの関係を着実に築いてきた深田監督。ただし、「本気のしるし」はコロナ禍に当たったため、現地入りは叶わず。久々のカンヌの参加は、映画監督として感動もひとしおだろう。
上映前には、映画祭総代表のティエリー・フレモーが壇上から挨拶。「深田晃司は日本の重要かつ創造的な作家で、濱口(竜介)と是枝(裕和)の間を繋ぐような存在。我々は彼が新作を作れば、注意深く追っている」と紹介した。
本作は芸能界の舞台裏と法廷ドラマを大胆に絡めた異色のアイドル映画。「元アイドルの女性に賠償命令」という新聞記事から着想を得た深田監督が、構想から10年をかけ完成させた渾身のオリジナル作品である。
主人公の人気アイドル・山岡真衣に扮するのは、元・日向坂46でセンターを務め、現在は俳優として活躍する齊藤京子。映画初主演にして、いきなり世界最高峰の映画祭でレッドカーペットを歩くこととなったが、楽しそうに手を振り、柔らかな笑顔を振りまいていた。
今回はインディーズ映画界を牽引してきた深田監督が、老舗のメジャーカンパニーである東宝とタッグを組んだ意欲作でもある。日本独自のアイドル文化の光と影を見せながら、中盤からは裁判シーンに突入してゆくスリリングな展開に目が離せない。日本社会の風刺のようなシーンもあり、座席数1068席を誇るドビュッシー劇場には時おり笑いが広がった。
上映後はフレモー総代表が見守る中、マイクを手にした深田監督が「今日という日をスタッフ、そして齊藤京子さんと迎えられてうれしい」と感無量の様子で挨拶。齊藤京子は日本人らしく丁寧にお辞儀を加えながら、「皆さん、本当に有難うございます。もう世界で一番幸せです!」と、声を弾ませた。
公式上映後には、あらためて以下のコメントを寄せている。
【深田晃司コメント】
最高の舞台でお披露目出来て嬉しく思います。公式上映では、スタンディングオベーションも嬉しかったですが、最初のシーンが始まった時に「この映画が生まれた」というように感じました。
映画が一本出来るのは奇跡のようなものであり、映画祭に選され、ワールドプレミアを実施し、主演俳優とその瞬間を立ち会うことができ、その主演俳優も楽しんでくれているなんて、こんなに監督冥利に尽きることはないです。
【齊藤京子コメント】
カンヌ国際映画祭に関わるなんて夢にも思わず、一生忘れない経験となりました。レッドカーペットはお祭りのような雰囲気で、気づいたら終わっていたという感じでしたが、後から実感が湧いてきました。
そして、世界で初めて上映される瞬間を、皆さんと一緒に観ることが出来て本当に幸せでした。今まで生きてきた中で一番幸せな日になりました。
齊藤京子が発言する様子を捉えた動画は、次ページにてご覧いただける。