かつては確執の噂も…実の親子が共演している映画5選。受け継がれるハリウッドスターの遺伝子…隠れた佳作をセレクト

text by 阿部早苗

フィクションの中で生まれる、ノンフィクション–。映画は時として、想像を超えた瞬間を映し出す。スクリーンの中で対峙する人間同士が本物の親子であったとき、そのリアルな関係によって、物語とは別の人間ドラマが生まれるのだ。そこで今回は、実の親子が共演している洋画を5本セレクトしてご紹介する。(文・阿部早苗)

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ジャッキーと息子の共演に嫉妬!?

ウィル・スミス×ジェイデン・スミス
『幸せのちから』(2006)

ウィル・スミス×ジェイデン・スミス
ウィル・スミス×ジェイデン・スミス【Getty Images】

監督:ガブリエレ・ムッチーノ
脚本:スティーヴン・コンラッド
出演:ウィル・スミス、ジェイデン・スミス、タンディ・ニュートン

【作品内容】

 新型医療機器のセールスが軌道に乗らず、生活に苦しむクリスは、真っ赤なフェラーリの持ち主から株の仲買人という職に出会い、無給の研修に挑む。息子との生活を守るため、住まいを失いながらも夢に向かって奮闘する。

【注目ポイント】

 日本では2007年に公開された映画『幸せのちから』は、実在の人物クリス・ガードナーの半生を描いた感動のヒューマンドラマ。しかしこの作品が多くの人々に特別な印象を残した理由は、ストーリーだけでなく本物の親子による共演がもたらす説得力と温かさがあるからだ。

 主演のウィル・スミスが演じたのは、ホームレスとなりながらも息子を育て、証券マンとして成功をつかんだクリス・ガードナー。その息子クリストファーを演じたのは、当時まだ8歳だったジェイデン・スミスだ。実生活でも父子である2人がスクリーン上で紡いだ絆は、フィクションを超えて観客の心に深く刺さったといえるだろう。

 劇中では、父と息子が駅のトイレで身を寄せ合って眠るシーンや、家を失いホームレスとなりながらも必死に息子を守り抜こうとする姿が描かれており、観る者に強烈な印象を与えている。

 本作での共演は、スミス親子の絆を深めただけでなく、それぞれの人生にとってターニングポイントになったといえる。

 ジェイデンはその後、俳優やアーティストとして多方面で活躍し、2010年には『ベスト・キッド』のリメイク版で主演に抜擢され、ジャッキー・チェンと共演を果たした。だが、ジェイデンがジャッキーと師弟関係を結ぶ姿を見て、ウィル・スミスは父としての嫉妬を覚えたという。そこで彼は、息子との再共演を実現すべく、映画『アフター・アース』(2013)の企画を自ら立ち上げた…というエピソードはつとに有名だ。

 ジェイデン・スミスは現在20代となり、俳優、音楽、ファッションといった多彩な分野で自分らしい表現を追求している。かつてスクリーンの中で父と手を取り合い、感動を生んだあの少年も、今ではひとりのアーティストとして着実に歩みを進めている。果たして、三度ウィル・スミスとの親子共演が実現する日は来るのだろうか。

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