映画 『西部戦線異状なし』は面白い? 衝撃のラストに賛否…。忖度なしガチレビュー《あらすじ キャスト 考察 解説 評価》
text by 柴田悠
映画『西部戦線異状なし』(2022)は1930年制作の同名映画をリメイクしたNetflixオリジナル作品。英国アカデミー賞では史上最多の7冠を達成。本場のアカデミー賞では作品賞をはじめ9部門にノミネートされるなど、各方面から高く評価されている。最新の技術を駆使して戦争の悲惨さをリアルに表現する本作のレビューを紹介する。(文・柴田悠)
1930年版を越える卓越した画力に驚嘆
美しい風景の中で行われる血で血を洗う戦い
本作は、原作はエーリヒ・マリア・レマルクによる同名小説で、本小説が原作の1930年制作の同名映画をリメイクしたNetflixオリジナル作品。監督は『ぼくらの家路』のエドワード・ベルガーで主演はフェリックス・カマラーが演じる。
本作の原点となる1930年版は生々しい戦場の現実を徹底したリアリズムと他の追随を許さない技術力で描き、アカデミー賞の最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞。この2022年版も負けず劣らず脅威の技術力で戦争を描き切り、英国アカデミー賞では作品賞をはじめ、英語作品賞や脚色賞など外国語映画としては史上最多となる7冠を達成している。
本作の舞台は、第一次世界大戦真っ只中の欧州。17歳の主人公パウルは、祖国のために戦う“英雄”を目指して意気揚々と西部戦線に志願する。クリスマスまでには絶対帰ると約束するパウルだったが、あまりに凄惨な最前線の様子を見た彼は、早々にその志が打ち砕かれることとなる…。
あらすじは、1930年版と大体同じである。しかし、本作の、卓越した技術力と画力は、1930年版を大きく凌いでいる。注目は、なんといっても戦場ならではの陰惨な描写と風光明媚な風景の対比だろう。第一次世界大戦では、ヨーロッパを舞台に戦車や毒ガス、火炎放射器などの最新兵器による泥沼の塹壕戦が行われ、およそ1700万人の犠牲者を生んだことが知られている。
本作では、この血で血を洗う殺戮が、惚れ惚れとするようなヨーロッパの風景で展開される。整然と並ぶ木立や美しい田園風景の中、若者たちが命を散らしていく様子からは、やるせなさすら感じてしまう。