史上もっとも危険な撮影を行った海外映画は?(2)ディカプリオが「人生で最も過酷な撮影だった」と語る作品は?

text by 阿部早苗

一歩間違えば命の危険すらあった――。映画はファンタジーだけじゃない。今回紹介するのは、極限の自然や苛酷な条件の中、CGに頼らず魂を削って完成させた洋画5選。俳優とスタッフの執念が作り上げた、リアルが光る映像体験の裏側に迫る。第2回。(文・阿部早苗)

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自然光だけで撮る決意――ディカプリオを極寒地獄が襲う

『レヴェナント 蘇えりし者』(2015)

レオナルド・ディカプリオ
レオナルド・ディカプリオ【Getty Images】

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン

【作品内容】

 熊に襲われ重傷を負ったハンターのヒュー・グラスは、仲間フィッツジェラルドに置き去りにされ、息子を殺される。復讐心だけを胸に、グラスは過酷な大自然を生き抜き、フィッツジェラルドを追う。

【注目ポイント】

 19世紀初頭、熊に襲われ瀕死の重傷を負った罠猟師ヒュー・グラスが、仲間に見捨てられながらも極寒の荒野を生き抜き、1人で生還を果たしたという実話を基にしている本作。

 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督がメガホンを取り、主演のレオナルド・ディカプリオが極限状態に追い込まれる男を熱演した作品だ。

 カナダやアルゼンチンの極寒の地で9カ月間行われた撮影には一切の人工照明やCGを使わず、自然光だけで映像を構築。そのため、1日に撮影できる時間はわずか1時間半ほど。そしてマイナス20度を下回る極寒の大自然の中で長期間のロケを敢行した。

 物語の流れをリアルに描くため、ストーリーを時系列順に撮影する「順撮り」を採用。また、美術監督のジャック・フィスクは、日光の向きを考慮し、朝用と夕方用に向きを変えたセットを2種類用意するという徹底ぶりだった。

 ディカプリオは、バイソンの生レバーを食べるシーンや、トム・ハーディとの殴り合いで鼻を骨折しながらも撮影を続行するなど、体当たりの演技に挑んでいる。後に「人生で最も過酷な撮影だった」と語るほど極限の現場に身を投じた。

 その努力が実を結び、ディカプリオは本作で悲願のアカデミー主演男優賞を初受賞。また、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督も、2年連続でアカデミー監督賞を受賞する快挙を成し遂げた。

(文・阿部早苗)

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【了】

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