ラスト15分で全てがひっくり返る映画は? 衝撃の結末(4)予想を超える絶望展開…余韻にひたれる隠れた傑作

text by ニャンコ

人生の再生、愛の幻影、疑念と信頼、そして心の深淵──。一見すると心温まる人間ドラマやミステリアスなスリラーが、ラストの数分で静かに、あるいは衝撃的に姿を変える。今回紹介する5本の映画は、観る者の予想を裏切り、その感情に深く揺さぶりを与える傑作ばかりだ。“すべてを失ってから始まる何か”を描いた、記憶に残る映画体験をお届けする。※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。第4回。(文・ニャンコ)

——————————

切ない余韻が残る極上ミステリー

『鑑定士と顔のない依頼人』(2013)

ジェフリー・ラッシュ
ジェフリー・ラッシュ【Getty Images】

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランド

【作品内容】

 重度の接触恐怖症を抱え、恋愛経験もない孤高の美術鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)のもとに、ある日「家族が遺した美術品を鑑定してほしい」という依頼が舞い込む。

 ヴァージルは依頼人の屋敷を訪ねるが、肝心の女性は姿を現さない。不在が続くなかで、彼は次第に、顔も見ぬその依頼人に強く惹かれていく――。

【注目ポイント】

 
 ジュゼッペ・トルナトーレ監督による『鑑定士と顔のない依頼人』は、美術品に囲まれ孤独に生きてきた男が、姿なき“愛”と出会い、やがて人生のすべてを失っていく過程を描いたミステリードラマである。

 主人公のヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は、完璧主義を貫く敏腕の美術鑑定士。ある日、広場恐怖症を患う若き女性クレア(シルヴィア・フークス)から、亡き両親の邸宅に残された美術品の鑑定依頼が届く。

 姿を見せようとしない彼女に対し、当初は疑念を抱くヴァージルだったが、電話や手紙を通じて交わされる言葉に心を動かされ、次第に惹かれていく。そしてついには恋に落ち、堅く閉ざされていた彼の心に初めて光が差すかのように見えた――。

 しかし、物語は終盤で一変する。ラスト15分、彼の人生は無慈悲に崩れ去る。クレアの正体は詐欺師であり、彼女との出会いそのものが、ヴァージルを標的とした緻密な計画の一部だったのだ。

 親友と信じていた修復師ビリー(ドナルド・サザーランド)さえも共犯者であり、ヴァージルは財産も心もすべてを奪われる。愛したはずの人も、信じていた友情も、すべてが嘘だった。

 それでもヴァージルは、かつてクレアと語らったレストランの時計の前に佇み、静かに彼女を待ち続ける。たとえ裏切りであったとしても、そこに“本物の感情”があったのではないか――そう信じるかのように。

 人生そのものがもし一枚の贋作だったとしても、愛だけは真作だったのではないか。そう思わせる、静謐で切ない余韻を残す傑作である。

(文・ニャンコ)

【関連記事】
ラスト15分で全てがひっくり返る映画は? 衝撃の結末(1)
ラスト15分で全てがひっくり返る映画は? 衝撃の結末(5)
ラスト15分で全てがひっくり返る映画は? 衝撃の結末(全紹介)
【了】

error: Content is protected !!