胸アツ展開…一件、時代錯誤な内野聖陽の「暑苦しさ」が心地よくなったワケ。『PJ ~航空救難団~』第8話考察&感想【ネタバレ】
内野聖陽主演のドラマ『PJ ~航空救難団~』(テレビ朝日系)が、放送中だ。本作は、航空自衛隊航空救難団に所属する救難員、通称PJ(パラレスキュージャンパー)を育てる救難教育隊を舞台に、教官と訓練生の心震える群像劇。今回は第8話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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12年前の遭難事故の真相
木曜ドラマ『PJ ~航空救難団~』第8話では、これまで断片的に明かされてきた12年前の遭難事故の真相に光が当たった。
沢井仁(神尾楓珠)は雪山での遭難事故で父・上杉幸三(和田正人)を亡くし、自身は宇佐美誠司(内野聖陽)に救われていた。現在は学生として教官に教わる立場であるが、改めて沢井は感謝を伝える。ようやくあの日のことを話し合えた2人だが、なにやら2人の様子がおかしい。
特に宇佐美は柄にもなく考え込む姿が目立ち、元妻・乃木真子(鈴木京香)や娘の乃木勇菜(吉川愛)に活を入れられる始末。くよくよ考えてしまうことは誰にだってあると思うが、宇佐美は立場上それはあまり許されない。彼の仕事をよく知っている“元”家族だからこそ発破をかけたのだろう。
宇佐美の心残りはどこにあったのか。それは、やはり沢井の父である上杉を救えなかったことだ。12年前、頭部を負傷した上杉を雪山の中で見つけた宇佐美は手当をした後、ヘリコプターが戻ってくるのを待つか地力で下山するか選択することを迫られる。
天秤にかけて後者を選んだものの、雪が想像以上に深かったこともあり、想定よりも時間がかかってしまう。その結果、上杉は宇佐美の背中で息絶えるのだった。
宇佐美は「生きて救えなければ何もできなかったのと同じ」と言う。たしかに救難員という彼らの仕事は人の命を救わなければならない。ただ、動作に無駄はなかったか、過信はなかったかと、自分を責める宇佐美は律し過ぎなのではとも思う。
自分自身に「あっぱれ」を贈ろう
しかし、その背景には宇佐美の過去も関係していた。宇佐美の父は偉ぶった医者で疎遠に。食事の場を持ったが、大した話をすることもなく、父は帰り道に交通事故に巻き込まれ帰らぬ人に。それを自分のせいだと思っているからこそ、宇佐美は沢井に同じ気持ちにさせないために父親をどうしても救いたかったと考えていたのだ。
この話を沢井本人に打ち明けているとき、宇佐美は反省しきりだ。私情を持ち込んだことが任務の失敗につながったと考えているのかもしれない。
だが、長い時間をともに過ごしてきた沢井はすでに宇佐美がどういう人間かを本人以上に理解している。誰よりも人を思いやり、優しく、まるで父のような存在でもある宇佐美に対し、“逆あっぱれ”を贈るのだった。
その後、宇佐美は集まった教え子たちと娘の前で「誰だって心はボロボロの中古だ。その傷のひとつひとつに意味があって、それが俺たちを作ってんだ。みんな傷だらけだ。それでも、その傷を背負って踏み出そうとする自分自身にもっともっと感動してやれ!あっぱれだって言ってやれ」と力を込めて言い放つ。
この言葉は仁科(濱田岳)の死などと向き合ってきた学生たち全員に響くが、宇佐美自身にも当てはまること。無意識に自分を勇気づける言葉を選んでいたのか。
いずれにせよ自分自身を必要以上に責めず、人からではなく自らからもあっぱれを贈り、もっと大切にしてほしいと願ってしまう。
父とは出来なかったことを、今度は娘に…。
私たちが少しずつ宇佐美という人間の輪郭を理解しているのと同時に、追体験的に重なるのが娘の乃木勇菜。彼女ははじめのうちは父の仕事を理解しておらず、パワハラまがいの指導をする教官たちを時代錯誤だとも考えていた。
しかし、近くで仕事を見ているうちにそれほど熱くなる理由を理解し、苦しいことも辛いことも学生たちと一緒に味わってきた。だからこそ、今までだったらただ暑苦しいと感じていた宇佐美の言葉にだって、笑顔で応答するようになったのではないか。
父とは最後までつながることはできなかったかもしれないが、娘とはそれができた。家族をないがしろにしがちだった宇佐美にとって、きっと感じたことのない喜びとなったはずだ。
そして物語はいよいよ最終話へ。過去も現在も乗り越えた彼らに待ち受けるものは一体何なのだろうか。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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